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【講演レポート】“働き方改革”の向かう先

掲載日

2018年5月8日(火)

“働き方改革”の向かう先
事例に見る働き方の根本的課題と解決の道のり



2017年11月22日(水)に開催した「COMPANY Forum 2017」での味の素株式会社 常務執行役員 藤江太郎氏株式会社岡村製作所(現社名:株式会社オカムラ) 未来企画室 室長 WORK MILL プロジェクトリーダー/ 編集長 遅野井宏氏日本ユニシス株式会社 人事部長 宮下尚氏の講演内容をダイジェストでお届けします。



働き方改革に、正解はない。取り組みのヒントを探るべく、それぞれのやり方で改革を進めている三社を招いて議論を行った。試行錯誤の上でたどり着いた働き方改革のあり方、浮き彫りになる新たな課題や発見を通じて、働き方改革の向かう先を考えた。





労働時間の削減は手段のひとつでしかない 三社三様の取り組み


2017年春、政府により働き方改革実行計画が策定され、その一つに長時間労働の是正が掲げられた。これにより多くの企業の関心は、労働時間管理に向いたのではないか。そんな中、スーパーフレックスタイムを提唱し、7時間15分勤務を主とした働き方を実現するのが味の素だ。2020年度までには、さらに時間短縮を図って“7時間勤務”を実現しようと計画している。
現場から反発はなかったのか。「やはり最初は、“仕事が山ほど残る中で帰れるわけがない”という声はかなり挙がった。しかし一方的にでも“ 型”を作ることで、一人ひとりが仕事のやり方や優先順位を考えるようになった。自分は何を成し遂げたいのか、どのような成果に結び付けたいのか、と各自がありたい姿を描く。その理想の姿と現在のギャップを課題として認識することができれば、課題に対して少しずつ改善を重ねるのは日本人が得意とするところ」と味の素の藤江氏は振り返る。
少し遠回りで“漢方薬”のような取り組みと控えめに語るが、同時に自らの働き方をデザインする「働き方計画表」の作成といった、自発的に働きがいを高められる施策を組み合わせて実践していることが、社員への定着を促進している。藤江氏は「“労働時間”はあくまでも意識変容のための一つの手段であって、真に働きがいや生きがいを高める取り組みに繋げていきたい。同時に、働き方改革 は、グローバルトップ10にふさわしい生産性の高い働き方を実現することでもあり、結果として会社の業績もよくなるというグッドサイクルを回していくことを目指している」と述べた。現在は、世界全社員を対象にエンゲージメントサーベイを実施することで、日々の改善に生かしている最中だという。

“残業ゼロ月間”を全社展開する日本ユニシスの宮下氏も、当初は「お客様が目の前にいるのに休めない」といった社員の声を懸念した。しかし、試験導入した部門からのフィードバックは、思いがけないものだった。働き方改革に取り組まなければいけないと危機感を覚えるのは取引先も同じ。同社の率先した取り組みに対して、多くの企業から賛同を得たという。「現在、残業ゼロ月間は、8割以上の部門が達成している。」

一方で、施策の効果が高く、企業が最初に取り組むべきなのが“会議の変革”だと語るのは岡村製作所の遅野井氏だ。遅野井氏自身が、働き方改革コンサルタントとして国内大手IT企業や外資系企業での活動実績を有し、あらゆる企業の働き方改革を身近に見てきた経験から、「新入社員から役員まで、全社員が行うのが会議だ」と有効性を語る。ひとたび改革と名付けると、その是非や生み出す価値に懐疑的になりがちだが、あらゆる層が変革を即座に実感できるからこそ、最初の足がかりとして適しているという。具体的な取り組みの事例として、「設定した会議時間の5分前に終了するルールを設ける」ことや「会議ゴールの登録をしない限り会議室予約を許可しない」、「だらだらと長引かせないための“立ち会議”」を紹介した。



短時間勤務へシフトした先にあるべきは“人生の充実”

味の素株式会社
常務執行役員 藤江太郎氏

日本においては、社員が企業に“属し”、企業の意向に“従う”といった考え方がいまだ根強いことは否定できない。一方、味の素ではグローバルの食品メーカートップ10入りを目指すことを目標に、人財も働き方もグローバル水準へと引き上げるため、日本法人の働き方改革は避けては通れない課題だった。フィリピンやブラジルといった各拠点で社長を務めた藤江氏からは、盲目的に働くことを強いる日本流の価値観は、もはや日本人にすら受け入れられなくなっていると指摘する。「人は誰しも、効率よくパフォーマンスを発揮し、一度しかない人生を楽しみたいという感覚を持ってる。短時間勤務へのシフトは、プライベートの充実を図ることでもあり、それを否定する日本人はいないと思う。」グローバルでは、公私共に充実した人生を送るために、短時間で質の高い成果を出すべきだという価値観が浸透している。これは、日本人も含めて万国共通で受け入れられる考え方なのではないかと述べた。




「やってみる」ことで効果が分かり、納得感のある施策につながる

日本ユニシス株式会社
人事部長 宮下尚氏

施策を進める上では、現場からも様々な反応が生まれる。人事部長として自身も率先して働き方改革に取り組んだ宮下氏は、社員の反応や各自の意識の変化について、自らの実体験を交えて語った。「自分の働き方を変える中で、限られた時間でいかに成果を出すかを常に考えるように意識が変わった。部下に対するレビューも、いかに適切な指示を出して社員たちが効率的に動けるかを重視するようになった。」
テレワークで部下が目の前にいない状態では、部下の働きを正しく評価できないのではという不安の声もあった。しかし、モデル部門を設定して試験的に実行したところ、思わぬ効果が生まれたという。まず部下は、仕事をやっていることを上司に示すために、しっかりと成果を出そうという意識を持った。次に、勤務時間の管理だけでなく、何の業務にどのくらいの時間を割いたかという実績をシステムで管理することで、上司は部下の仕事状況を実績ベースで把握することができるようになった。
試験的な取り組みによって効果を測ることで、社員の納得を得られる。“実際にやってみよう”という姿勢が施策の浸透につながると宮下氏は主張する。



“ダイバーシティ推進”によって得られるもの

株式会社岡村製作所
(現社名: 株式会社オカムラ)
未来企画室 室長
WORK MILL プロジェクトリーダー/編集長
遅野井宏氏

働き方改革の一環として、長時間労働の是正とともに各社が力を入れる“ダイバーシティ推進”。特に女性活躍推進に対する取り組みは活発だ。しかし、意外なところにも多様性は不足している。
遅野井氏は、仕事のバリエーションが増えているにも関わらず、オフィスは画一的で、自席と会議室しか選択肢がないという点に言及した。性別や人種だけでなく、静かなところで集中できる人、がやがやしたところでも集中できる人等、働き方の特性にも多様性がある。例えば一人で集中できるブースや、アイデアを誘発するような外の景色が見えるエリアを設けることでバリエーションを出す等して、オフィスの中にも多様性を取り入れることが近年の流れになっている。「オフィスの中にある色でカラーパレットを作ると片手で終わる企業が多いと思うが、そこで創造的な仕事を、というのは無理な話」と指摘し、生き生きと、人らしく働けて変化のある空間が創造性を引き出すと述べた。
では、社内に多様性を持たせることはどのような効果を生むのか。藤江氏は、海外にいた際の経験に触れた。「物事を決めるとき、色んな人が色んなことをいう。ダイバーシティは正直手間のかかることだと感じる一方で、新たな発想や考え方、つまり、多様性はアウトプットを高めるとも感じた。」よって、空気を読んで暗黙の了解で物事を進めるのではなく、適切なコミュニケーションを取る手間をかけている。様々な意見を織り交ぜて集合知で意思決定をしていくことで、新たな発想や考え方が生まれることを実感していると述べ、旧来の日本流コミュニケーションを変えることの重要性を示唆した。



“働き方改革”がゴールになっていないか

「働き方改革といわれても、何をすればよいか分からない」という声も多い。遅野井氏は、働き方改革が手段から目的にすり替わってしまっている、と危機感を持つ。「禅問答のようだが、働き方改革のゴールは、各社がそれぞれの課題に応じたゴールを設けることだ。」これまでのように、画一的な物差しで働き方を評価することに無理があった。例えば成功のプロセスも、課長から部長にプロモーションされることだけではなく、人によって様々な成功のあり方が認められるべきだ。終身雇用の概念がなくなり、様々な仕事を選択できる社会において、いかに自分のありたい姿を設定していけるかが大事であると訴えた。
宮下氏は、「ルールがなくても社員が自立的にパフォーマンスを出すための行動がとれる状態」をゴールと捉えている。そのために、社員一人ひとりと直接会話をして働きかけることを心掛けている。背景にあるのは、取り組みを進める上で一番下の組織長が抵抗勢力になったという経験だ。トップから発せられるメッセージを、一番上の組織長は理解して行動することができる。しかし、伝言ゲームのように下におりるにつれてメッセージが弱まっていくのだ。トップの意思や意図を全社に浸透させるには、しっかりとコミュニケーションを取って伝える努力が必要だと語った。
働き方改革に正解がないことは依然として変わらない。重要なのは、会社として何を目指していくかを定めること。そして、コーポレート部門が取り組みを先導する役割を担い、一人ひとりの行動から意識を変えていくこと。三社の取り組みの中に、改革を成功に導くヒントが見出された。





ワークスが主催する「COMPANY Forum」は、その年のトレンドに合わせた有識者や企業の方々に登壇していただくビジネスフォーラム。国を挙げて“働き方改革”が叫ばれた2017年は、Workforce Innovationをテーマにし、人工知能(AI)をはじめとする最先端技術・ビッグデータの活用等、多彩なセッションを開催しました。






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