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中国ビジネス最前線 第5回

中国ビジネス最前線 第5回
日本の失敗に学ぶ

中国ビジネス最前線 第5回
日本の失敗に学ぶ




日本は成功したからこそ失敗の宝庫

外務省の要請で日本企業文化論講座を在上海日本総領事館で開講したときのこと、質疑応答で中国人聴講者がすっと立ち上がり訊ねた。「日本は確かに経済成長したが蹉跌もあったと思う。それは何か?今の中国にヒントになることがあれば教えてほしい。」 想定外の問いかけに頭が真っ白になったが、しばらく考えてこう答えた。「敗戦後、すべてを失った日本人は保有している技術を駆使し、電気製品や自動車などを作り輸出して外貨を稼ぐことで経済を成長させてきた。しかし経済力が増すと外圧で為替レートが見直され(プラザ合意)、円安から円高へ何度も切り替えが行われるたびに不況に陥ったが、品質を高めコストダウンを図ることで難局を乗り切ってきた。将来、中国もそういう局面が来るかも知れない」と。質問者もこれにはかなり納得感があったようで、彼は頷きながらゆっくりと腰を下ろした。

また別の聴講者からは「日本企業の社会貢献活動で、失敗したことは無かったのか?」と訊かれた。このときの私の講演では在中国の日本企業がビジネスで儲けるだけでなく、”売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし”の精神をもって地域や国に恩返しの社会貢献活動をしていることを解説したのである。多くの日本企業の最終目標は社会貢献であることを強調もした。その上での質問だったが、これにもこう答えた。「企業側の思い込みだけで行動して失敗したこともある。例えば四川大地震のときに食糧や水を被災地に届けたが、それらは他からすでに十分に届いており本当に必要なのは医薬品だったことがあった。社会の課題やニーズをきちんと把握しないと無駄どころか迷惑にすらなることがある。」

(写真:筆者による中日平和友好条約締結40周年記念「日本企業文化論」講座)

失敗為成功之母

写真:筆者指導の卒業論文のキーワードには”失敗原因分析”とある

これまでの大学の日本ビジネスに関する卒業論文と言えば、日本の成功事例を取り上げいかに中国に適用させるかであった。ところが最近は変わりつつある。上海外国語大学で指導中の学生から「卒業論文のテーマに日本の携帯電話メーカーの海外進出を取り上げ、その失敗例を分析して中国メーカーの成功プロセスを解明したい」と相談されたときはいよいよ来たかと思った。かつて日本はケータイ先進国であったのに、なぜ海外市場に普及しなかったのか。その学生は、日本はスマートフォンへの対応が遅れただけではなく、日本国内でしか使えないような高機能機に固執し、現地ニーズを取り入れなかったことだと分析していたが一理あると思う。中国にはこれを反面教師にして成長した会社がある。伝音というスマートフォンメーカーをご存じだろうか。知らなくて当然、中国人にすら知られていない中国企業だ。Google で伝音を検索しても難聴としか表示されず、Baiduで検索するとこの会社情報がようやく表示され、アフリカで大人気の中国スマートフォンメーカーと紹介されている。この会社は富裕層向けのDual SIM搭載スマートフォン、若者向けのカメラ機能充実の高級スマートフォン、低所得者向けの高コストパフォーマンスのフィーチャーフォンの3ブランドでアフリカ市場の4割を獲得している。このように今や日本の失敗を学び、成功するヒントをモノにしている中国企業が現れ、ビジネスマンや学生の良い研究材料になっている。

いま日本企業が中国から学ぶべきことは

これまでの日本経済・企業は中国人から成功者と見られている。一時はGDPが世界2位にまで昇りつめ、中国には多くの日本企業が進出し日本製品が溢れ、日本に憧れすら抱いてくれていた。しかし最近は粉飾決算やブラック企業、あるいは世界一と自負する品質大国での品質検査不正など負の面が目立ち反面教師の題材に事欠かないのは日本人として歯がゆい。 では、日本は何をすべきか?私は中国がスマートフォン決済やEC、シェアリングエコノミーなど、ITと通信を駆使したイノベーションで大きく経済成長していることを謙虚に学ぶ姿勢が重要だと考える。14億人近い国民が毎分毎秒データを産み、それがIoTを通じてビッグデータとして蓄積・分析・実行されている姿は壮観である。日本のたった1億人のデータ量では到底かなわない。それが分かっていても、多くの日本企業は相変わらず上から目線で学ぼうとしない。我が社が上海で人工知能型ERPの研究開発をしているのは、まさにこれを学び、先端技術を採り入れるためである。





ワークスアプリケーションズ中国 董事長

北京大学特別招聘教授

上海外国語大学特別招聘教授

五十木 正(Tadashi IKARUGI)

ワークスアプリケーションズ中国 董事長

北京大学特別招聘教授

上海外国語大学特別招聘教授

五十木 正(Tadashi IKARUGI)








掲載日

2018年8月28日(火)

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