タレントマネジメントを導入する時のあるべき姿と注意点とは?

本記事では、事例を交えながら、タレントマネジメントを導入する際の注意点や取り組み方を解説します。

タレントマネジメントの導入が難しい2つの理由

「タレントマネジメントを強化するよう言われたが、何をしていいかわからない」 「タレントマネジメントの理論は抽象的すぎて、実務に活かせない」 そうした声を良くお伺いします。実際、「タレントマネジメント」という概念は非常に難解だといえます。その理由は大きく2つあります。 

「タレントマネジメント」の曖昧さ

1つ目は、そもそもの定義自体がかなり曖昧だということ。「タレントマネジメント」ということばを生み出したとされるSHRM(The Society for Human Resource Management)によれば、タレントマネジメントとは、

“人材の採用、選抜、適切な配置、リーダーの育成・開発、評価、報酬、後継者養成等の各種の取り組みを通して、職場の生産性を改善し、必要なスキルをもつ人材の意欲を増進させ、その適性を有効活用し、成果に結びつける効果的なプロセスを確立することで、企業の継続的な発展を目指すこと”

として定義づけられるといいます。

非常に長く、曖昧な定義であると誰もが思うのではないでしょうか。

この定義の改善なくしては、曖昧な議論に終始することになります。ーそれでは議論が前に進まないため、この曖昧な”タレントマネジメント”という言葉からは出来るだけ離れるようにして、「採用」「配置」「育成」といった言葉を選ぶべきなのかもしれません。

 

「日本型」タレントマネジメントの未熟さ

タレントマネジメントが難しい2つ目の理由、これは特に”日本企業にとって”難しい理由だと言えます。

それは、タレントマネジメントという概念が欧米の考え方をもとに作られたものだというところにあります。マッキンゼーが1994年に行った調査をまとめた「ウォー・フォー・タレント」は大変有名な著書ですが、その中身は主に採用管理と後継者管理が中心になっています。いまでさえキャリア採用や後継者管理に力を入れる企業も珍しくはなくなったものの、従来の日本型の企業文化でいえば新卒一括採用や年功序列の年功賃金制が日本企業の主流です。

欧米とは人材獲得の方法も育成の方法も異なる日本において、タレントマネジメントという概念を理解し、取り入れようとすることが難しいのは当然です。

 

欧米人事と日本人事の違いを正しく理解してタレントマネジメントに取り組もう

 タレントマネジメントという概念が欧米式の考え方で、日本企業にとって難しいというのは先述の通りです。しかし、一方で日本企業がタレントマネジメントの考え方から学べることも多くあります。

例えば1990年代以降普及し、今では大半の日本企業が導入していると言われる目標管理制度。これも元々は米国で始まった業績評価の一種です。欧米で普及した施策が日本企業にも根付き、効果を発揮する例は少なくありません。

日本型人事と欧米型人事がどう異なるかをきちんと理解しておくことで、欧米型人事の考え方を日本企業にも取り入れやすくなります。
日本型人事と欧米型人事は、大きく、以下の3点において異なります。

 

  • 日本人事と欧米人事の違い① 
    組織の管理方法 まず、組織の管理方法が異なります。
    日本企業の組織は”◎◎部”や”△△課”といった「箱」の集合体であり、そこに部長や課長といった役割を担う社員が入っています。
    一方、欧米企業の組織は”◎◎部長””△△課主任”といった「ポスト」の集合体であることが特徴です。 
    欧米ではポストごとに欠員が出ないよう、各ポストを厳密に管理しますが、日本企業では部署ごとの要員管理が中心となるのが違いです。

 

  • 日本人事と欧米人事の違い② 
    昇進・昇格・昇給 2つ目の大きな違いは「昇格」というプロセスです。 
    「5等級から6等級に上がったので、肩書きは主任のままだが給料が上がる」という日本では一般的な考え方が、欧米には存在しません。
    日本の人事制度は等級制度を基礎にしているので、課長から部長に上がる、という「昇進」とは別で、5級から6等級に上がる、という「昇格」が存在します。
    そして、この等級が、実際の肩書きよりも大切にされていたりします。
    一方、欧米企業の場合、空きポストが出なければ昇進もないし、給与が上がることもないため、ポストが空かないから辞めます、も欧米では珍しくありません。

 

  • 日本人事と欧米人事の違い③ 
    異動のプロセス 「異動」も日本人事と欧米人事の差異が色濃く出るポイントです。
    「ジョブローテーション」に代表されるように、日本企業では自由に人材配置を決めることができます。部門を跨いだ人の異動も日本ではよく見受けられます。
    しかし、欧米でジョブローテーション制度は一般的ではありません。基本的にはその職務の上の空きポストへ上がるか、辞めて別の企業でポストを探すか、の2択のみです。
    別の部門への異動を希望する場合、「公募」という非常に限定された手段しかその希望は実現できないのが一般的です。

 

このように、日本人事と欧米人事の差異を正しく理解しておくことで、欧米で普及した施策が日本でも成功するかどうか、根拠を持って精査することができるようになります。きちんと差異を理解し、効果的な施策を取り入れていくと良いでしょう。

日本企業がタレントマネジメントを充実させるための2つの選択肢

 日本企業にとって難しいタレントマネジメントだが、大きく2つの方法で充実を目指すことができます。

 

  • ジョブローテーションを改善する
    目的にあわせて、ジョブローテーション制度を改善することでタレントマネジメントを充実させることができます。 

    例えば経営のゼネラリストを育てるという目的がある場合、「3つ以上の部署で実務を経験すること」「コーポレート部門・事業部門の双方でマネジメントを経験していること」などのルールに基づきジョブローテーション制度を運用することで、より精度の高いものになり、意図した人材育成が実施できるでしょう。

    ジョブローテーション改善の施策を持続的に行っていくための運営整備も欠かせなません。異動に関わるルールを整えると同時にチェック業務(過去所属のチェック、親族チェック、年次逆転チェック、等)をできる限り自動化するために、システム導入は効果的です。

    ジョブローテーションを形式的な儀式ではなく、経営人材育成のための効果的な施策として社内に浸透させることこそが、「日本型タレントマネジメント」実現の第一歩であるといえます。

 

  • サクセッションプラン(後継者管理)を取り入れた事例
    欧米式の人事施策を部分的に取り入れることもタレントマネジメントを充実させるひとつの選択肢です。

    サクセッションプラン(後継者管理)の活用も、そのひとつです。 サクセッションプラン(後継者管理)の運用においては、まず重要なポストに就いている社員に、各ポストの後継者候補を指名させます。その上で会議体を設け、突然の欠員による事業継続のリスクが隠れていないか、計画的に人材育成が進められているか、を確認するようにします。

    その結果を組織全体で共有することで、 
    「経営人材が慢性的に不足している」「優秀な人材がいるのに空きポストがない」
    など、個々の組織だけでは解決できない課題に対して、全社的な観点から解決策を講じることができるようになります。

海外のトレンドを日本流にアレンジする

 タレントマネジメントをめぐる理論の多くはアメリカをはじめとする海外を起源としています。しかし、本記事で見てきたとおり、根本的な人事管理の考え方は、日本と海外とでは大きく異なります。

海外で発生した人事管理のトレンドを知り、それらを積極的に取り入れる姿勢のみならず、それらを「日本流にアレンジする」ことが非常に重要だといえるのではないでしょうか。

より詳細については、ホワイトペーパー『日本企業にとって「タレントマネジメント」とは何か』をご覧ください。

 

 

本サイトは、快適にご覧いただくためCookieを使用しています。閲覧を続ける場合、Cookie使用に同意したものとします。 Cookieポリシーを表示