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日本のタレントマネジメント論

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ジョブローテーションにどうシステムを活用するか

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ジョブローテーションにどうシステムを活用するか


ジョブローテーションとは、さまざまな業務経験を積ませるために、定期的な配置転換を行うことを指します。ジョブローテーションを行うことで、従業員は複数の部署を経験することができるため、俯瞰的に会社全体の業務内容や経営環境を知ることが可能となります。
一言にジョブローテーションといっても、入社後3年から5年での異動を行う制度から、1か月単位の短期間での異動を数回経験させるものまで、その活用方法も多岐にわたります。

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自社の人事制度の一環としてジョブローテーションを取り入れている日本企業の割合は、73%にものぼるとされています。※1
しかし日本以外の国々においては、このようなジョブローテーション制度を実施している企業はあまり存在しません。ジョブローテーションは、終身雇用制を前提としている日本に特有の制度なのです。

そのため、異動やジョブローテーションに関する事例や研究は、他の人事管理領域に関する研究、例えば採用や報酬、モチベーションといった分野の研究と比較して非常に事例として少なく、多くの企業が独自の手法を発達させてきたという経緯があります。

※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構「企業の転勤の実態に関する調査」:平成29年2月より
  正社員規模1,000人以上



ジョブローテーションを行う6つのメリット

一般的に、ジョブローテーションの実施には以下のような期待効果があるとされています。

  1. ジェネラリストの育成
    ジョブローテーションを通じて従業員はさまざまな業務を経験することになるため、幅広い経験を持った人材を育成することができます。一般的にジョブローテーションは3年から5年の期間で異動を繰り返します。3年程度特定業務を経験すれば、その特定業務については一人前になることが期待できます。
  2. 従業員の適性職種の見極め
    採用後の面接や研修だけでは新入社員の適性を見極めることは困難です。また、終身雇用の影響で新入社員自身も、特定の専門的な業務領域のプロフェッショナルになりたいと考え企業に就職するのではなく、その「会社」への入社を志し就職活動を行っているケースが多いとされています。その帰結として、海外諸国と比較して、大学で学んだ専攻分野とはまったく異なる事業を行っている企業に就職するケースが非常に多いことが、日本の特異性でもあります。 会社も従業員も、どういった業務に適性があるのか模索している状態の中、従業員に短期間でさまざまな業種を経験させ、所属した部署からの意見を参考にしながら適性の見極めを行うといったプロセスが必要とされているのです。
  3. 社内のリレーション構築
    副次的な効果として、社内のリレーション構築をあげることができます。さまざまな部署を経験する中で、従業員は自ずと社内の部署内外に多くの知り合いができます。これは、他部門と協力しながら何らかの成果をあげなければいけない際には、非常に大きな強みになるでしょう。
  4. 従業員のモチベーション向上
    何年にもわたって同じ業務を繰り返し行うことは、従業員の成長意欲を阻害し、業務に対する物足りなさや飽きを誘発します。定期的な配置転換を行うことで、このような事態を解消し、心機一転できる新たなチャレンジを従業員に与え続けることが可能となります。
  5. 柔軟な経営実行体制の構築
    ジョブローテーションを通じて、任意の部署に従業員を迅速に配置することが可能となります。人手不足に陥っている部署へすぐに人材を配置したり、あるいは今後全社をあげて注力したい新規事業などがあった際には、優秀な人材をピックアップし、企業の一存でその新規事業に就かせることができます。
  6. 人材獲得コストの削減
    採用市場は、企業の人手不足に象徴されるように、売り手市場になっています。そのため、外部から人材を獲得するのは困難で、その競争は熾烈を極めます。社内の優秀人材を育成し、定着させることの重要性は日々高まってます。前述のとおり、ジョブローテーションは、優秀な人材の育成とその人材の定着、双方に効果が期待できます。多くの業務を経験させることで、従業員の成長スピードを高めることのみならず、長らく同じ業務につくことによる従業員の仕事に対する物足りなさや飽きを解消することができるからです。


要注意!ジョブローテーションの思わぬ落とし穴

以上のようにさまざまな効果が期待できるジョブローテーションですが、良いことばかりではありません。
ジョブローテーションには様々な批判があるのも、また事実なのです。

まず、ジョブローテーションはジェネラリストが育つ反面、スペシャリストが育たないとも言われています。
3年程度のスパンで異動を繰り返すため、自ずと特定分野についての専門性がつきにくくなります。やっと一人前にその部署の仕事ができるようになったと思った頃に配置転換を命じられるため、従業員にとっての負担が大きいのはもちろん、現場部門からの反発も一定程度あるのが事実です。

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また、ジョブローテーションは従業員のモチベーションの低下になりうる施策でもある点があげられます。
ジョブローテーションは従業員にとって新たなチャレンジの機会を提供する反面、望まない業務の遂行を命じられるリスクでもあるのです。従業員が、所属している部署に貢献するために新たなプロジェクトに取り掛かろうとしているタイミングであったり、あるいは担当業務が大詰めを迎えようとしているタイミングで配置転換を命じられるようなことがあると、従業員のモチベーションは大きく低下します。

さらに、ジョブローテーションはその運営に非常にコストがかかるのも特徴です。
人事部がジョブローテーションの実現方法を考える作業には、非常に大きなコストがかかります。
まずは、異動案の作成です。異動対象者を検索・リストアップし、誰を異動対象者とするのかを決め、さらにはその異動対象者をどこに配置すべきかを一人ひとり考えていく必要があります。
その異動案が社内のルールを逸脱していないか、といったチェック作業にも時間を要します。規定に反する異動はないか、各部署の要員数は適切か、各部署の業務遂行能力にばらつきはないかなど、数多ある異動の組み合わせから、社内の多くの規定を順守するための配置案を導くのは、非常に大変な作業です。

ようやく最善の異動案ができたと思っても、最後に、その異動の実行可能性を現場と交渉する必要もあります。現場との交渉においては、従業員が優秀であればあるほど、現場部門はその従業員を手放し、他の部署に行かせることに抵抗します。これらの交渉は非常にコストがかかり、時間的・精神的にも大きな負担となりがちです。

ジョブローテーションにシステムを活用しよう

ジョブローテーションに対する批判を受けて、ジョブローテーションを廃止した日本企業もあります。
しかし、ジョブローテーションは、今後も重要な人材育成の手法として継続して重視される制度であり続けると考えられます。ドラスティックな制度変更は大きなリスク要因となり、なにより終身雇用制度のもとで、ジョブローテーションに代わる人材育成の手法は未だ見出されていないからです。

ジョブローテーションにシステムを活用するポイントは、人事データの一元管理とチェック作業の自動化にあります。

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人事データの一元管理を行うことで、人事部は、従業員のおかれた状況や本人の希望を正しく把握することができるようになります。本人の望む異動がどのようなのものなのか、あるいは望まない異動はどのようなものなのかを理解することで、モチベーションの低下といったリスクを回避することができます。

チェック作業の自動化も、システムに期待すべきメリットの一つです。
異動を考える際には、多くの判断が求められます。しかし、全ての判断を人が行う必要はありません。 戦略的な判断はシステムによって代替することはできませんが、最低限の機械的な判断業務はシステムに置き換え、自動化・効率化を追求すべきだと言えるでしょう。


掲載日

2018年8月27日(月)

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