タレントマネジメントシステム活用事例3選とそのポイント:後継者管理から配置転換まで

「タレントマネジメント」という言葉が一般的になってから10年強、多くの日本企業がタレントマネジメントシステムを導入するようになりました。しかし、そのタレントマネジメントシステムを「活用できていますか?」という問いに対しては、なかなか気持ちの良い返答ができないという企業も多いように見受けられます。

 "タレントマネジメントシステムを買ってみたのはいいけれども、なかなか仕様設計ができずにとん挫してしまった"
 "タレントマネジメントシステムは導入したけれど、あまり使われなくなってしまった"
 "タレントマネジメントシステムの中のデータが古いままで役に立たない"
 "タレントのデータは入っているけれど、具体的な業務に使っているわけではない"

といったお声をいただくことがあります。

せっかく導入したタレントマネジメントシステムを十分に活用するためには、どうすればよいのでしょうか。

その答えは企業によって異なりますが、他社の活用事例は自社のタレントマネジメントシステムの活用方法を考える上で大きなヒントになります。そこで、本記事では、自社のタレントマネジメント推進に役立つ、タレントマネジメントシステムの活用事例を目的別に3つご紹介したいと思います。

タレントマネジメントシステム活用事例1:
    人材情報の収集・一元管理と可視化を実現

 

事例1_A社.jpg

 

日本の大手企業は組織改編・分社化・統合などを繰り返してきた結果、組織や人事制度が「パッチワーク」のようにつぎはぎになっています。そのため、社内にどのような人がいるのか、自社の人事データにはどのような傾向があるのかを、容易に把握できなくなっているケースがほとんどです。

会社、組織といった様々な「パッチ」から、一つの壮大な「織物」を作り出すような施策が急務であるにも関わらず、多くの企業はこの問題を解決するには至っていません。

こうしたつぎはぎの状態で実務を行うと、以下のような課題に直面します。

  • 人事データベースが複数存在しており、横ぐしで社員情報を検索・閲覧できない
  • 人事データベースはあるものの、それとは別に表計算ソフトや紙で管理している情報が複数ある
  • 欲しい情報を抽出するまでに、情報の二次加工・三次加工が必要なため、非効率となっている
  • 経営層から要求されるレポートを迅速に作成できない

そこで活用されるのがタレントマネジメントシステムです。タレントマネジメントシステムの導入目的として、最も基本的で重要なのは人材情報の収集・一元管理とその可視化の実現です。従業員に関わるデータを整理・整頓し、社内の人事情報を俯瞰的・直感的に把握できるようにするとともに、任意のデータをすぐに引き出せる状態にしておくこと。この点こそ、どのような人事施策を立案・実行しようとも欠かすことはできません。

上記のような課題に直面していたA社(運輸業・従業員数約4,000名)では「COMPANY Talent Management」を採用し、人事情報の一元管理を実現しました。人事情報を一元管理するにあたっては、以下のポイントが重要になります。

ポイント① 一元管理するべき項目を定義する

タレントマネジメントシシステム導入の肝となるのは、その仕様設計です。設計した仕様が実際の業務の目的に適合していない場合、そのタレントマネジメントシステムは「使いにくいシステム」「使うに値しないシステム」といったレッテルを貼られてしまいます。 タレントマネジメントシステムで最も重要な仕様は、管理対象とする人事項目です。人事部以外の現場部門がタレントマネジメントシステムを利用することを想定しているのであれば、誰がどんなデータが欲しいかをヒアリングし、リストアップする必要があります。

A社では、全部門が自由に従業員の業務経験歴や資格保有状況、特技などを閲覧できる状態にしたいと考えていました。そのため、各部門長にヒアリングを行い、どのようなデータへのニーズがあるかを丁寧にリストアップするという方法をとりました。A社人事部長は、タレントマネジメントシステムを「現場に活用されるシステムにしたい」という強い想いがありました。人事部は、人事データについての他部門からの問い合わせを多く受けており、例えば「Aさんについての情報が欲しい」「Bさんの経歴を教えてくれ」といった質問が頻発していました。人事部長は、これらの問い合わせ対応の工数を削減するとともに、全社からの「人事データを見たい」というニーズにきちんと応えたいと考えていたのです。そのために、タレントマネジメントシステムに取込むデータ項目を定義するにあたっては、たとえ時間をかけてでも、丁寧なヒアリングを心掛けたといいます。

当然ながらあらゆる要件を盛り込もうとすればするだけ、システムの稼動時期に影響を与えることになります。そのため、まずは優先順位を付けて最小限の要件で稼動したのちに、各現場部門からの要望を反映できるような柔軟なタレントマネジメントシステムを選定することも重視されました。そして、タレントマネジメントシステムが稼動した今でも、現場からの要望を取りまとめ、追加する項目を定義し、実際にシステムに反映するというプロセスを定期的に実施しています。

 

ポイント② 情報を陳腐化させないための運用施策を定める

データベースの仕様設計が完璧にできたとしても、そのデータベースを常に最新の人事データが格納される状態にしなければ、様々なユーザーに利用されるタレントマネジメントシステムにはなりません。そこで重要になるのは、データの陳腐化を防ぐ運用設計の視点です。タレントマネジメントシステムにきちんとデータが格納され、そのデータが最新の状態に維持されるようにするためには、以下のような運用が考えられます。

 

タイミング

施策

1

システム導入時

データベースに格納したい情報を全従業員から(強制的にでも)収集する

2

月次

人事・給与管理システムとの連携により、住所・家族などの基本データの自動更新を行う

3

半期

人事考課の際に評価以外の必要情報も集めることで、業務経験歴など陳腐化しがちな人事データが更新されるようにする

4

常時

全従業員に最大限の情報を開示することで、自発的な情報入力を促す

業務経験歴や保有資格、使用可能言語、趣味や特技、適性やコンピテンシーなどなど。これらの情報を収集するのに最も適したタイミングは、タレントマネジメントシステムを公開するときです。

「タレントマネジメントシステムを公開します」という全社向けのアナウンスの中で、「つきましては、システムの自己申告機能を利用し、フォーマットに必要情報を記入してください」と提出を促すのです。ポイントは、この記入に強制力を持たせることです。 全社集会等において、人事データの提出がなぜ重要なのかという経緯の説明と、提出は任意ではなく必須である旨のメッセージを人事部長や経営層から発することで、提出率がほぼ100%になったという事例もあります。

 

人事情報の検索機能.png

▲人事情報の検索機能:多様な軸での項目検索と、高速な全文検索が特徴。

 

タレントマネジメントシステム活用事例2:
   後継者管理で幹部候補生を計画的に育成・登用

 

事例2_B社.JPG

 

 冒頭にお伝えしたとおり、タレントマネジメントシステムが導入される一つのきっかけは、長い歴史の中で人事制度や人事情報が散在し「パッチワーク」化した状態を解消することにあります。特にグローバル展開する企業の場合、この「パッチワーク」はますます複雑化するため、「どこにどんな人がいるのか分からない」どころか「どの国に何人いるのかを知る術がない」という事態になっているケースがあります。

こうした場合は一般的に、「活用事例1:人材情報の収集・一元管理と可視化」を複数国に展開してグローバル人事データベースを構築します。国をまたぐ人材情報を統合的に把握するには、このグローバル人材データベースが有効です。しかし、それだけでは現状理解ができるのみで、次のようなニーズには応えることはできません。

  • 国をまたいだ人材異動を検討したい
  • ローカル社員を現地法人の幹部に登用したい
  • 幹部候補が十分に育っているか確認したい
  • ポストが不足しているので、他の国に空きポストがないか知りたい 

 こうした課題を解決するのが、後継者管理です。後継者管理の業務は、以下の3つに大別することができます。

  1. 各重要ポストに対して後任候補者を割り当てる
  2. 1で割り当てた後任候補者の育成計画を立案する
  3. 2の育成計画の進捗管理を行う

 後継者管理を行うことによって、幹部候補の育成を促進できるだけでなく、後継者不足に陥ちいりそうな拠点やポストを常に把握・管理することが可能になります。これにより、事業継続性の向上としても貢献できます。

  グローバル展開しているB社(サービス業・従業員数約3,000名)では、以上の目的を達成するため、後継者管理業務にタレントマネジメントシステムを導入しました。B社が新たに後継者管理に取り組む上で、特に以下の点が重要になったといいます。

ポイント① 現場部門の協力を得やすい仕組みを作る

 後継者管理を導入するにあたって最も障壁となるのが、現場部門をいかに巻き込むかという点です。常業務に追われる幹部社員・幹部候補社員にとって、人事部から要請される後継者指名業務や情報登録業務は「余計な仕事」と認識されてしまう可能性があります。そのため、後継者管理は重要な経営課題であること、また今後の事業拡大やマネジメントの現地化を進めるために必須の施策であることを理解してもらう必要があります。だからこそ、なぜ後継者管理を行う必要があるかを、懇切丁寧に説明する機会を設けるべきだといえます。

そうした上で、後継者管理を行うためにタレントマネジメントシステムを導入する際は、以下の点を留意する必要があるでしょう。

   ・シンプルな項目設計に基づく入力画面
   ・システムの速度が十分に担保されていること
   ・後継者の検索が容易に行えること

ポイント② 後継者管理を主題とした会議体を開催する

 後継者管理のおいて本来の目的を達成するためには、後継者について議論するための会議体を定期的に開催していくことが欠かせません。この会議では、「後継者」の基準をすり合わせ、後継者の育成計画を立案することが主たる目的です。育成計画を考えるにあたっては、他拠点の重要ポストの空き予定などを参照した上で、「この人は将来的にこのポストに就かせよう」などといった議論ができることが理想です。

このような時間軸を考慮し、かつ多くの拠点に対して育成計画を検討するのは、それなりの労力と時間を要します。そこで、タレントマネジメントシステムを活用することで、効率的にかつ精度の高い後継者管理を実現することができるようになります。

 

後継者管理機能.png

▲後継者管理機能:重要ポジションに対する指名状況やコメントを確認できる。後継者不足や重複指名などがあった場合は、システムからのアラートが表示される。

 

 タレントマネジメントシステム活用事例3:
   適材適所を実現するためのツールとして活用

たいていの日本企業で行われているジョブローテーションですが、実はこのジョブローテーションは多くの人事部門のメンバーの努力と苦労の上で成り立っています。最善の異動案を考えるためには、従業員の過去の経歴や異動先の希望等を確認しなければなりません。そうして最善の異動案を作成できたと思っても、各部門長との折衝を経た結果、その異動案が日の目を見ないで終わることも少なくありません。また、異動案が確定した後も、辞令文を発行して、内示を出し、異動をシステムに登録するといった多くの事務作業が待っています。

こうした一連のジョブローテーションの精度を高め、ルーチン業務を効率化するための手段としてタレントマネジメントシステムの活用が有効となる場合があります。

ジョブローテーション制度において、特にユニークな取り組みをしているのが、株式会社ニトリホールディングスです。

ニトリでのタレントマネジメント実践事例

 ニトリ様_logo.pngニトリでは、 全従業員を対象に、2年に1度の頻度で現場や本部を越えた異動を行う“配転教育(配置転換教育)”を人材育成の主軸としています。一人あたりの生涯平均配転回数は20回で、2016年に発令された人事異動数は3,000以上にも及ぶといいます。つまり、毎週50~100人の異動発令を出していることになります。他社とは比較にならないほどの頻度で配置転換を行っているニトリ。同社の上席執行役員 五十嵐明生氏はこう言います。  

「2014年にワークス社の『COMPANY』を導入したのは、さらなるグローバル展開を見据え、詳細な社員情報を多言語で一元管理できるシステムを求めたから。国を越えた配転は『COMPANY』で なければ実現できなかった。」

また、五十嵐氏は「COMPANY」の選定理由として、

  • 国ごとに社員番号を変えることなく配転・評価・教育等の履歴管理ができること
  • グローバル統一のデータベースを構築できること

等を挙げます。そしてシステム導入後は、異動起案の内容検討に必要な情報を各国各店舗から収集・管理できるようになったことで、ニトリグループとしての共通の認識に基づいた配転教育を実現できているといいます。

 
▲ニトリホールディングスにおけるグローバル人事システム構築の目的、各地の事業環境や慣行に適応する人事制度設計の工夫や各地でのリーダー育成法、HCMシステム(人事・人材管理システム)の活用方法などについてのインタビュー

活用されるタレントマネジメントシステムの共通点

今回は、タレントマネジメントシステムの活用事例を3つご紹介しました。これらの成功事例に共通するポイントは、何でしょうか。

それは、タレントマネジメントシステムを導入する目的が非常に明確であることが挙げられます。“従業員が自由に人事情報を閲覧したり、面談内容を記録し履歴管理できるようにしたい。” “従業員の幸福のために最大限本人の希望に沿った異動案を作れるようにしたい。” “全社視点で重要ポストへの就任計画を立てたい。” このような強い目的意識をもってタレントマネジメントシステムを導入することで、導入の際に実施すべきことが明確になり、システム活用が促進される傾向にあります。逆に、「なんとなく」のシステム導入では、ゴールも定まらずシステム活用を推進する人もいないため、タレントマネジメントシステム導入が失敗に終わってしまうリスクは高くなります。

タレントマネジメントシステムの検討にあたりお困りの点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。ワークスアプリケーションズでは、タレントマネジメントシステムのご提供にとどまらず、システム導入の目的設定からシステムの仕様設計までの支援をしています。

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