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Web記事新リース会計基準

2025/11/28

新リース会計基準の対象企業【早見表】と対象企業が押さえておきたいこと

新リース会計基準への対応では、まず「どの企業が適用対象で、どの契約が対象になるか」の全体像と判断の観点を押さえ、移行まで見据えた実務設計につなげることが重要です。本記事は、対象企業の判定、対象契約と例外、実務上の要点を整理しました。自社の適用方針と移行計画を整理する一助となれば幸いです。

目次

    1.新リース会計基準「対象企業」判定ポイント【早見表】

    新リース会計基準への対応を進めるにあたり、まず自社が対象企業に当たるかを早期に判定しておくことが重要です。下の早見表は、初動判断の目安を整理したものです。連結方針によっては子会社・関連会社へ波及する可能性がある点にも留意してください。

    区分 適用の基本スタンス

    主な判定ポイント(目安)

    グループへの波及
    上場会社 原則 対応前提 金融商品取引法の適用企業である場合 連結方針により子会社・関連会社へ波及しやすい
    会計監査人設置会社 原則 対応前提 監査人を設置している場合 子会社に対応要請が及ぶ場合あり

    会社法上の大会社

    (資本金5億円以上または負債総額200億円以上)

    原則 対応前提 大会社要件該当の場合 グループの方針に応じて波及
    親会社が上場の子会社・関連会社 要請が生じやすい 親会社連結パッケージによる適用要請を受けている場合 親会社方針に基づき対応が必要になることがある
    非上場・中小企業 原則 任意適用 IPO準備中、資金調達予定がある、または主要取引先(海外含む)からの適用要請を受けている場合 適用により財務の信頼性向上が見込める場合あり

    境界事例

    (持分法関連会社/SPC/海外子会社〈IFRS運用〉等)

    個別判断 連結・持分法の対、親会社連結パッケージによる適用要請、またはIFRS16号対応との整合要請のいずれかに該当する場合 ケースごと。方針次第で波及範囲が変動

    【まとめ】

    原則対応

    • 上場会社

    • 会計監査人設置会社

    • 会社法上の大会社

    適用要請が生じやすい(連結パッケージ/親会社方針次第)

    • 親会社が上場の子会社・関連会社

    原則任意適用

    • 非上場・中小企業(IPO準備/資金調達予定/主要取引先(海外含む)からの適用要請を受けている場合は対応)

    個別判断

    • 持分法適用関連会社

    • SPC

    • 海外子会社(IFRS運用:IFRS16号との整合要請の有無による)等

    ※グループへの波及:連結方針により子会社・関連会社へ適用要請が及ぶ場合があります。

    2.対象企業の詳細

    2-1.上場会社

    【原則対応】
    上場会社は、開示や監査の要請から新リース会計基準への対応が前提となります。決算スケジュールに合わせて連結範囲全体で要件定義と契約収集を前倒しし、注記・影響額の説明まで一貫した設計を整えることが重要です。特に不動産賃貸借や長期レンタルなどの実質リースを含め、対象契約の洗い出しを網羅的に行うことが初動のポイントです。なお、連結方針次第では適用要請が子会社・関連会社へ波及しやすいため、グループ共通の判断基準と運用フローを早期に統一しておくとスムーズです。

    2-2.会計監査人設置会社

    【原則対応】
    会計監査人を設置している会社も、監査対応上、原則として基準対応が求められます。識別・測定・注記までの運用フローを文書化し、再測定や指数改定に備えた記録管理と証跡を整備します。子会社への要請が及ぶ構造であれば、連結パッケージに基づく統一的な方針展開が重要です。

    2-3.会社法上の大会社

    【原則対応】
    会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)は、制度面・監査面から対応が前提となります。契約数・拠点数が多い傾向を踏まえ、契約収集と再測定プロセスの自動化を前提としたシステム設計を初期段階で固めると、決算期の負荷平準化に有効です。また、連結方針やグループの会計ガバナンスに応じて、適用要請が子会社・関連会社へ波及する場合があります。グループ共通の判断基準と運用フローを早期に統一しておくとスムーズです。

    2-4.親会社が上場の子会社・関連会社

    【適用要請が生じやすい】
    親会社の連結パッケージや方針により、適用要請が生じやすい区分です。自社の決算方針だけでなく、親会社が求める会計方針・注記様式・データ粒度に合わせた運用を準備し、IFRS16号との整合や期間設定の前提も事前にすり合わせておくとスムーズです。

    2-5.非上場・中小企業

    【原則任意、特定の要請時は対応】
    非上場・中小は原則任意適用ですが、IPO準備、資金調達、主要取引先(海外含む)から要請がある場合は検討対象になります。適用によってリース債務の可視化や開示の一貫性が高まり、財務の信頼性向上が見込める場合があります。導入の可否は、契約のボリューム、既存の会計方針、開示ニーズを踏まえ、便益と運用負荷のバランスで評価するのが実務的です。

    2-6.IFRS16号の適用企業

    【侮れない影響が出る可能性あり】
    すでにIFRS16号を運用している企業は、認識測定の考え方が新リース会計基準と近いため、大幅な会計処理変更は生じにくいかと思います。一方で、これまでは連結のみの調整で良かったところが単体決算上での報告も必要となるため、業務フローや連結調整の取り扱いは大幅に変化することも考えられます。また、国内基準の例外措置や注記等の対応を考えると、決して準備が不要な訳ではなく、取り扱いを確認する必要があります。親会社や海外拠点との方針整合、期間やオプション判断の一致、注記様式の差異などを整理し、国内報告への落とし込みを明確にしておきます。 

    3.対象となる企業が押さえておきたいこと

    3-1.オンバランスとなる契約

    対象契約の判定は、形式的な契約の名称とは関係なく、取引の実質に基づいて行い「特定された資産」と「使用の支配」を重視します。したがって、不動産賃貸借、長期レンタル、供給・アウトソーシング契約等の実質リースも確認対象です。

    例外と経過措置

    短期リース(12か月以下・購入オプションなし)や少額リースには簡便的な取扱いの選択余地があります。移行時は、移行方法として修正遡及法または完全遡及法を選択でき、あわせて再判定免除などの実務上の便法(実務簡便措置)が用意されています。

    Web記事

    新リース会計で、300万円基準を利用するための3つの条件

    2023年5月にASBJ(企業会計基準委員会)より 新リース会計基準の公開草案が公表されました。この基準では、原則としてすべてのリース契約がオンバランスとして処理しなくてはならなくなった一方で、いわゆる「300万円基準」は維持される見通しとなっているため、少額判定がどのように適用できるかによって自社のオンバランス対象が大きく異なる企業も多いかと思います。この記事では、新リース会計基準の概要を抑えながら、 300万円基準の適用にあたって考慮すべき条件について詳しく解説します。

    3-2.適用時期(強制適用/早期適用)

    新リース会計基準の強制適用は、2027年4月期首、早期適用は2025年4月期首から可能となっています。また、財務指標への影響は、B/Sは使用権資産とリース負債が増加、P/Lは賃料から減価償却+利息へ置換(初期は費用が前倒しになりやすい)となります。新リース会計基準の影響や変更点等の詳細は、こちらの記事で解説していますので、ご参考ください。

    Web記事

    【完全解説】新リース会計基準2027年適用|概要・変更点・影響・実務対応

    2027年4月から適用される新リース会計基準は、従来オフバランスとして扱われてきた多くの契約についても、原則として貸借対照表に計上することを求める大きな改正です。そのため、契約の棚卸し・リース判定・割引計算・仕訳や注記の見直し・システム対応など、経理担当者が取り組むべき範囲はこれまで以上に広がります。

    3-3.会計処理の実務ポイント

    借手会計の基本手順

    借手会計の基本手順は、①識別、②リース/非リース構成要素の区分、③リース期間の決定、④初度測定・認識(割引率の決定を含む)、⑤その後の測定です。
    開始時は「使用権資産/リース負債」、期中は「元本返済+利息」を認識し、使用権資産の減価償却は原則リース期間で行います。所有移転や購入オプション行使が合理的に確実な場合はその期間を含めてリース期間を見積もります。

    ▶詳細は、【完全解説】記事の「4.1 会計処理の流れ(借手)」をご参照ください。

    再測定と自動化

    指数改定、契約変更、期間やオプション判断の変更により再測定が頻発します。新リース会計基準で増えるのは仕訳だけでなく再測定・再計算の頻度であるため、人的作業の限界を見極め、早期に自動化の設計に着手することを推奨します。

    サブリースの要点

    サブリースを持つ企業では、借手の処理に加えて貸手の処理も必要となり、実務が複雑化します。処理は、サブリースの分類(ファイナンス・リース/オペレーティング・リース)に応じて分かれます。ファイナンス・リースの場合は、ヘッドリースの使用権資産(またはその一部)を消滅させて純投資を認識し受取利息を計上します。ヘッドリースとサブリースの条件突合や解約時の処理復元、差額の損益認識等、システム対応が現実的です。

    ▶詳細は、【完全解説】記事の「4.3 サブリースが絡む場合のイメージ」をご参照ください。

    多拠点での減損判定

    多拠点運営の企業では、拠点ごとの賃貸条件の差や見積り前提の相違、データの不揃い等が重なり、減損判定にばらつきが生じやすくなります。これを抑えるため、①グルーピング単位の定義、②兆候チェック項目の標準化、③将来キャッシュフローの推計フロー、④減損額の按分ルールの4点を先行整備しておくと、運用が安定します。なお、これまでオフバランスであった賃借不動産も使用権資産として計上されるため、四半期ごとの減損兆候の判定対象は広がります。

    税務への影響

    現行基準におけるオペレーティング・リースについては、「減価償却費+利息費用」、税務は「支払額ベース(債務確定ベース)」となり、原則、税会不一致が発生します。対策は、二重台帳(会計値と税務値)の保持、損金認容スケジュールの自動生成、申告調整資料の定型化です。なお、税会不一致は適用契約の増加に伴って膨らみます。会計・税務の二重台帳管理を前提に、早期から設計・テストし、決算・申告の作業負荷を平準化しましょう。

    ▶詳細は、【完全解説】記事の「4.4 税務との不一致(税会不一致)」をご参照ください。

    3-4.移行に向けた計画

    新リース会計基準の対応に必要な要件は、契約収集・判定・再測定(再見積り)・仕訳・注記・税務等、非常に広い範囲にまたがります。適用前・初年度・適用後で業務量は段階的に増大するため、Excel中心運用は避け、影響試算・計算・再測定に耐えるシステムを選定し、関連部門を巻き込みながら導入することが重要です。
    主に必要となるシステム要件としては、下記のようなものが挙げられるかと思います。

    システム要件

    • 契約登録/一括登録

    • 使用権資産/リース負債測定

    • 償却計算/利息計算

    • 再見積登録/履歴保持

    • 仕訳作成

    • 注記自動作成

    • 税会不一致対応/認容スケジュール出力

    • 承認ワークフロー

    • ログ・監査証跡

    • 会計システムとの自動連携(マスタ/仕訳)

    • 貸手/サブリース対応

    HUEでは、必要とする機能や運用に合わせて選べる2つのソリューションをご用意しています。自社の状況に応じてお選びいただけます。ぜひご検討ください。

    4.新リース会計基準の適用を進めるなら

    出発点は適用対象(企業)の初期判定と対象契約の洗い出しです。数値影響を概算し、経営・監査と見解を合わせながら、方針・システム・体制づくりを並行して進めていきましょう。

    対象契約の洗い出しは、現場から集めるということが大変です。そこで、新リース会計基準でオンバランスになる契約を各部門から集めるためのシートを無償でご用意しています。分かりやすいレイアウトですぐに使える収集シートと、現場向けに説明できるスライドも合わせて提供していますので、すぐに配布し収集ができます。

    公認会計士監修で、必要十分な項目を最小限の準備で集めることが可能です。ぜひご活用ください。

    また、影響額の試算についても「影響額試算ツール(Excel)」を無償で提供しています。月額リース料、割引現在価値等の入力値に基づき、各種オンバランス金額や費用額を試算可能です。こちらもご活用ください。

    以上の要点を踏まえ、本記事が貴社の適用方針と移行計画を今日から前進させる実務ガイドとなれば幸いです。

    井上 雅彦 氏

    監修:井上 雅彦 氏(公認会計士)
    監査法人のパートナーとして、リースに関わる監査、アドバイザリー業務に長年携わる。監査法人トーマツリースクレジットインダストリーリースリーダー(元)、現在は、日本公認会士協会と連携した一般財団法人会計教育研修機構でリース担当シニアフェローを務める。 リース会計税務に関する書籍を主著で計8冊出版(直近では「新リース会計の実務対応と勘所」を2025年2月末出版)。リース事業協会研修講師を長年務めた他、リース研修講師30件超経験。

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