ERPを活用したDX推進のポイント!効果を最大化するために必要な視点を解説
昨今、ビジネス環境の激しい変化に対応するためにデジタル技術を活用したDXを推進する一貫として、ERPを検討する企業が増えております。導入を急ぐ企業も多いですが、十分な検討を行うことなく導入すると目的が達成できなかったり、高いコストだけが掛かってしまったという事態になりかねません。本記事では、ERPにおけるDXが具体的にどのようなものなのかや、実際に導入する際のポイントについてわかりやすく解説します。
目次
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ERPにおけるDXとは
DXはDigital Transformationの略称で、デジタル技術を駆使してビジネスに変革を起こすことです。DXを実現するために検討が増えているもののひとつとして、ERP(Enterprise Resource Planning)があります。DX全体については社内で進め方の議論を行っているものの、ERPでDXを推進することがどのようなことを指すのか曖昧になってしまっているという声もよくお聞きします。そこで、本章ではまずERPにおけるDXとは何かについて、一般的に言われる「DXの段階」についての説明を交えながらご紹介します。
1.DXの3段階
図に示した通り、DXにはその達成度合いに応じた段階があります。
1段階目:デジタイゼーション(アナログ→デジタル情報に変換)
例えば、紙で稟議書を回していたところからワークフローシステムを導入したり、紙のリストを電子化する、といったアクションが該当します。
2段階目:デジタライゼーション(デジタル技術による業務効率化)
データをデジタル化した上で、例えばワークフローで申請プロセスを効率化したり、予実管理のためのデータを自動集約して効率化するといった活動がこちらにあたります。
3段階目:デジタルトランスフォーメーション(新しいサービス・ビジネスモデル等の付加価値を生み出す)
業務を効率化した上で、例えば今まで行ってこなかったデータの分析や活用をして業務を変革させていくといった活動が対象となります。
最終的には新しい価値を生み出すデジタルトランスフォーメーションがゴールとなりますが、1段階目や2段階目が達成できていない状態で3段階目を実現するということは難しく、段階を追って進めていくことが重要です。
2.ERPが担う役割
では、このようなDXの段階から考えた際にERPはどのような役割を担うのでしょうか。
ERPはヒト、モノ、カネといった情報を一元管理することで業務の効率化や適切な経営判断を実現する仕組みです。DXにおいてはアナログデータをデジタル化し、業務を効率化してデータを蓄積していく役割を担います。蓄積されたデータが基になって業務の改革や新しいビジネスへのチャレンジへと繋がっていくため、大きな役割を担っていると言えます。
世の中にあるDXをうたったツールやサービスなどは個別の業務のみを改善するといったものも多く、特に膨大な業務データを扱っている場合は、DXを進める上でのデータ基盤として不十分になる可能性があります。
いざ3段階目を推進しようとしても必要なデータが揃っていなかったり、データを集めるのに膨大な時間がかかってしまうといったケースも発生します。
業務データを統合管理するERPを使うことでそのような事態を防ぐとともに、データの利活用が容易となるため、業務改革やビジネスの変革がより実行しやすくなります。このように、ERPはDXを進める上で大きな役割を担っており、その活用がDX推進の大きな後押しとなります。
効果を最大化するDX推進のポイント
前章にて、ERPにおけるDXについての定義や役割をご説明しました。では、実際にERPを活用してDXを進めるにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。進め方のポイントをご紹介します。
1.自社のレベルを意識する
まずは、自社がどのようなレベルにいるのか現状を把握しましょう。その上でどのレベルを目指すのかを明確にすることで必要なERPの要素も見えてきます。
1章でも触れましたが、DXと一言で言ってもその達成レベルは様々です。以下の図は経済産業省が発行している「DX推進指標とそのガイダンス」で定義しているDX推進の指標となります。
◆DX推進指標
引用:「DX 推進指標」とそのガイダンス 令和元年 7 月 経済産業省 より
https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf
この指標は取り組みの影響範囲や戦略の有無によって、DXの推進度合をレベル分けしたものです。各レベルに該当する状況の具体例を挙げると、それぞれ以下のような状態が考えられます。
レベル1:一部での散発的実施
横ぐしの戦略はなく、それぞれの部門でとりあえずペーパーレスを推進するために
ワークフローシステム等を導入しているような状態。
レベル2:一部での戦略的実施
経理部内で特定の業務(経費精算・請求書払い等)の改善が必要という方針に基づいて、
システムやツールを選定しているような状態。
レベル3:全社戦略に基づく部門横断的推進
全社的な戦略として管理会計や現場の業務効率化を推進するといったグランドデザインまで行った上で、
そこにつなげられるような要件を担保した各種システムを導入しているような状態。
レベル4:全社戦略に基づく持続的実施
システムの導入だけでなく、効果測定や継続的な活用の推進まで仕組み化し、
システムが陳腐化しないような風土・文化が作れている状態。
自社がいずれのレベルにあるにしてもこのような指標を活用することで、次にどのレベルを目指すのかや検討ができていなかった視野を得ることができます。目指すレベルに到達するためにERPをどのように活用していくのかという点を具体化していくことで、必要なERPの要件も明確になっていきます。
また、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のホームページでは「DX推進指標自己診断結果入力サイト」が公開されています。自社の情報を入力することでベンチマークとの比較などの分析結果を得ることができますので、こちらのサイトもご活用ください。
独立行政法人情報処理推進機構 DX推進指標自己診断結果入力サイト
https://www.ipa.go.jp/ikc/info/dxpi.html
2.何を実現するかを明確にする
自社のレベルを明確にしたら、次に具体的に何を実現したいのかを決めましょう。
経済産業省が発行しているDX推進ガイドラインには以下のような記載があります。
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多くの経営者が DX の必要性を認識し、DX を 進めるべく、デジタル部門を設置する等の取組が見られる。しかしながら、PoC(Proof of Concept: 概念実証、新しいプロジェクト全体を作り上げる前に実施する戦略仮説・コン セプトの検証工程)を繰り返す等、ある程度の投資は行われるものの実際のビジネス変革には繋がっていないという状況が多くの企業に見られる現状と考えられる。
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引用:デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン平成30年12月 経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf
これは前述のレベルの話にも関係しますが、例えばレベル1「一部での散発的実施」からレベル2「一部での戦略的実施」に引き上げるには、具体的に何をするのかを検討する必要があるということです。
そのためには、例えば現状の業務の分析や整理を行って課題を抽出し、それらの課題を解消したあるべき業務を描くところから始めると良いでしょう。例えば、全社的に業務分析をして経理部門における経費精算業務、特に紙による精算にコストが掛かっているという結果が得られれば、ペーパーレスを目指すという軸を中心に効率化する仕組みを検討することが可能となります。
様々なケースがあるにしても、デジタル技術を活用することが先行して、目的化してしまうことがないように注意する必要があります。「ERPを導入する」ということを目的にするのではなく、導入することによって「何を実現するのか」を見定めましょう。
このように、ERPを活用した上でどのようにビジネスを変革するのかという点をよく議論し、方針を固めて組織としても共通認識を持っておくことが重要です。
3.人材の育成
方針を決めていざDXを進めることになっても、それを進める人材がいなければ実行に移すことは難しくなります。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)がまとめている「DX実績手引書」には、以下のような人材が必要と記載があります。
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「ヤタガラス(八咫烏)人材」が中心となり DX の方向性や開発推進、事業適用を牽引 していた。経営の言葉で経営者を説得し、事業の言葉で事業部門を巻き込み、技術の言葉で開発 メンバーと実現可能性の議論ができる。そのような人材が中心にいることで、スムーズに DX プロジェクトを立案・推進できる。
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引用:DX SQUARE 学んで、知って、実践するポータルサイト「DX実践手引書 ITシステム構築編」より
https://dx.ipa.go.jp/tools/dxpg
DXを進めようとなると、様々な現場の業務を変えていく必要があります。また一方で、経営者としては目に見える成果やコストなどを重視する傾向があります。そのため、DXを推進する人材は単純にERPの技術に詳しいだけではなく現場の業務を理解し、かつ経営者の視点も持って関係者と交渉ができる「ヤタガラス人材」である必要があります。
ただし、このような人材はどの組織にもいるわけではないため、ジョブローテーションによって育成を促したり、外部から登用したり、場合によってはチーム内で役割を分担するといったことも行う必要があります。
いずれにしても、ERPを導入してDXを進めるうえで人材の育成や確保、組織の整備は避けては通れない部分になるため、早いうちから取り組んでおくことが重要であると言えます。
ERPにおけるDXの具体的な事例
ここまで、ERPにおけるDX推進のポイントをいくつかご紹介しました。実際に進める際にはこれらのポイントをおさえることが必要ですが、モデルケースとなるような事例を知っておくということも未開拓なDXという領域では重要となります。
そこで、本章では弊社ERPを利用してDXを進めているユーザー様の事例を2つご紹介します。
1.ユーザー業務の効率化・高度化の事例
ERPを導入することで、システムを利用するユーザー業務の効率化・高度化が実現できます。
バラバラのシステムを組み合わせて使っていたり、Excelを使っていたりといったケースでは例えば、2重でデータ入力をしなければならず、データの不整合により欲しいデータがすぐに見れない、データ収集に時間を要するといった課題が発生します。
ERPの導入によって業務データを一元管理することで、これらの課題を解消しユーザー業務の効率化、高度化を実現することが可能となります。
業務データの一元化によって課題を解消した事例として、弊社ユーザーであるTDK様(製造業)の研究開発部門における取り組みが御座いますので、ご興味のある方は以下リンクよりご覧ください。
2.データ活用の推進事例
システムを独自に作り込んでいて老朽化しているような場合、各業務領域のデータが独立してしまい、利活用が難しくなってしまうことがあります。ソリューションによっても異なりますが、ERPは基本的に業務で必要な機能をすべて網羅するよう設計されており、情報の散在や孤立化といった事態を防ぐことができます。
ERPを導入することで密に統合されたデータの活用が可能となり、データを活用した分析や業務改善など一歩先のレベルまで業務を引き上げ、DXを推し進めることができます。
太陽光発電システムの設計~販売までを手がけるエクソル様が上述のような課題を解決した事例がございますので、ご興味のある方は以下リンクよりご覧ください。
目的を確実に達成できるERPの導入を
ここまで、ERPにおけるDXについて事例や進め方のポイントを解説させて頂きました。
実際にERPを使ってDXを推進していく際には、自社のビジネスを変革させるという観点で必要な機能や仕組みがあるかを慎重に検討する必要があります。当記事でも触れましたが、「何を実現するのか」に焦点を当ててソリューションを導入することが重要です。
弊社が提供している大手企業向けERP「HUE」は、日本の大手企業で必要とされる機能を備えた統合型ソリューションです。業務改革に関わる機能・ノウハウをパッケージの標準機能として豊富に備えており、DX推進を強力にサポートすることが可能です。
その他にも、弊社ユーザーの事例やお役立ち情報などの発信も継続して行っておりますので、ご興味のある方はご活用ください。
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内閣官房IT総合戦略室電子インボイスのキーマンが語る、電子インボイスによるDX推進の最新事情
2023年10月よりインボイス制度が施行。経理部門の業務や会計システムの改修影響を危惧する声が上がっている。
内閣官房 加藤博之氏の講演内容(2021年5月26日講演)をもとにインボイス制度・電子インボイスの概要などを中心に簡潔にご紹介。
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