ERP / 会計
MIRARTHホールディングス株式会社
ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット 2026
AI×ERPの土台を築くMIRARTHホールディングスのゼロアドオン事例
登壇者:
MIRARTHホールディングス 執行役員 グループDX&VX戦略部長 安田 健様
IT業界にて15年以上にわたりSEやコンサルティング部門の責任者を歴任し、多岐にわたる大手企業の課題解決を牽引。現在はMIRARTHホールディングス執行役員として、グループ全体のDX戦略やAIガバナンス確立など経営に直結する変革を統括している。
ワークスアプリケーションズ(以下 WAP)は、2026年6月17日(水)~18日(木)にウェスティンホテル東京で開催された「ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット」に出展社として参加しました。初日には、WAPの大手企業向けクラウドERP「HUE」をご活用いただいているMIRARTHホールディングス様と共にセッションに登壇。同社が13カ月での稼働を達成した実践的アプローチを紐解きながら、脱カスタマイズが、なぜAI活用の第一歩へと繋がるのか、その核心に迫りました。
本記事では、該当のセッション「AI×ERPの土台を築くMIRARTHホールディングスのゼロアドオン事例」のサマリーをお届けします。

PartⅠ:MIRARTHホールディングスの選定から稼働までの実践的アプローチ
【HUE選定の背景】多角化経営を支える経営管理プラットフォーム
MIRARTHホールディングス 安田様:
当社は、創業50周年を迎えた2022年に、タカラレーベンからMIRARTHホールディングスへ商号を変更し、持株会社体制へと移行しました。事業セグメントとしては、不動産事業、アセットマネジメント、エネルギー事業、そしてその他商業事業など、多角化経営を進めています。これまでの経営管理は財務会計がメインでしたが、多角化経営を進めていくためには、PL(損益計算書)だけではなく、BS(貸借対照表)もしっかり見て、業務データを財務会計に紐づける必要があります。これを実現するために、会計システムを刷新しようというのがこのプロジェクトの始まりでした。

当社が進めるDX方針において、経営管理プラットフォームとして位置づけたのが、ERPシステム「HUE」です。単なる会計ツールというよりも、経営をどう回していくのか、どうアプローチさせるのかという点に重きを置きました。検討の背景としては、財務会計と管理会計を一元化する「財管一致」を達成し、リアルタイムなROIC経営の実現を目指しました。
【製品選定の決め手】WAPの「Fit to Standard」と無償バージョンアップ
製品選定にあたっては、10社以上の候補からRFI(情報提供依頼書)で絞り込み、最終的に3社によるRFP(提案依頼書)を行いました。当社が時間をかけた選定ポイントは、主に2つあります。不動産事業など特有の業務要件を標準機能で対応できるのかという「Fit to Standard」の徹底、そしてアドオン開発への考え方です。「アドオン開発をすれば要件を満たせます」という回答はすべてマイナス評価としてスコアリングしました。
その結果、既存の会計システムのバージョンアップも含め、コスト面・機能面・アドオン開発有無を踏まえて、最も優れた提案をいただけたWAPを選定しました。選定を大きく後押ししたのが、導入後にかかる見えないコストの部分です。アドオン開発を行うと、将来の法改正やバージョンアップのたびに開発会社とのすり合わせが必要になり、手離れが悪くなります。これに対し「HUE」は法改正への対応をはじめ、標準機能として担保された範囲で、無償バージョンアップができることも大きな評価ポイントでした。
【ERP標準化と単一パッケージ導入】アドオンゼロでスケジュール遅延も予算超過も回避
Gartner社のリリース「Gartner、ERPの標準化はデジタル技術を活用した業務変革に不可欠な経営課題であり、カスタマイズを20%未満に抑えるべきとの見解を発表(2026年4月6日付)」によると、「カスタマイズに対する依存度が高い企業、つまり、利用機能におけるカスタマイズの割合が20%以上の回答者では、20%未満の場合と比べて、プロジェクトの納期・予算超過のリスクが高まる」という結果が出ています。* 当社はアドオンゼロで実施したことによって、スケジュール遅延や予算超過も「ゼロ」で構築ができました。

今回、当社は「HUE」の5つのモジュール(財務・管理会計、債権・債務管理、財務・資金管理、固定資産管理、経費精算)を単一パッケージとして導入しました。これらのモジュール同士が、密結合でなくて疎結合になっている点が非常に重要でした。この設計により、先行導入した2社の設定を維持したまま、今後予定しているグループ会社8社への展開も、機能のオンオフのみで対応できる体制が整いました。
【構築後の展望】AI活用推進に必要なクリーンなデータベース
構築後に目指す、次なるパラダイムはAI活用です。現在のDX推進は、AIの活用なくしては実現が難しいと考えています。
当社が掲げるAI活用の到達目標は、4段階定義でいうLevel3とLevel4です。その実現における会計システムの役割は、会計データと業務データを掛け合わせてAIで経営示唆を出すことです。そのために、AIが検索しやすいクリーンなデータベースであることは重要なポイントとなります。
基本的には会計システムは現在と過去しか見えないものですが、AIを活用して未来を予測することで「予測型ROIC経営」へと変革をしていくことが当社の展望です。また、マーケティング投資対効果(LTV)の完全追跡や自律型財務による異常検知によるガバナンス遵守、というところにもチャレンジをしたいと考えています。
こうした展望を踏まえ、当社は「地域社会のタカラであれ」という2030年に向けたビジョンを掲げています。クリーンなデータ基盤(HUE)という強靭な「心臓」、それを流れるデータという「血液」、そして思考を巡らせるAIが担う「知性」の三位一体で、不動産、エネルギー、金融の枠を超えたシナジーを生み出し、サステナブルな未来の環境デザインを実現することを目指しています。

PartⅡ:MIRARTHホールディングス×WAP
WAPはRFPの全項目に対応
WAP:
HUEを選んでいただく過程のなかで、WAPの印象はどのようなものでしたか?
MIRARTHホールディングス 安田様:
ご聴講・ご視聴中の皆様が、もし今後会計システムのRFPを出すとしたら、WAPの回答に驚かれると思います。すべての項目が「〇」で返ってきます(笑)。よくよく見ると、現時点では未実装な機能もあるけれど、各社から要望がある部分なので、御社のスケジュールに合わせて開発が間に合いますということでした。つまり、当社の要望を日本企業の共通した要望として捉え、HUEの標準機能に取り込みます、という姿勢です。こういった点が他社と一線を画していました。
WAP:
国産ベンダーとしてお客様の声を取り入れ、標準機能をアップデートし続けているからこそ、高いフィット率で回答することができました。
先ほどGartner社の調査でも話題に上がった「Fit to Standard」ですが、実際に稼働を迎え、現場の混乱や、標準機能では回らないといった状況はありましたか?
MIRARTHホールディングス 安田様:
基本的には製品の標準機能に合わせることができたと思います。一部キャッシュフローの資金管理は、稼働初期の不安を解消するため、念のためExcelを残して並行稼働をしていますが、おそらく一年も経てば無くなると思います。あとは、HUE自体はカスタマイズゼロで進められたのですが、営業が使う販売管理システムとHUEを連携させる上で、連携システム側の開発費用が裏で膨れていたというのはあります。同じプロジェクト内に連携システム側も巻き込んで、全体の標準化をもう少し徹底しなければいけなかったというのは反省点です。
現場の同意でブレのない「Fit to Standard」が実現
WAP:
プロジェクトに参加された現場部門の方々の理解があったからこそ「Fit to Standard」が実現できたと思われますか?
MIRARTHホールディングス 安田様:
特に経理部長が、チャレンジングかつ前向きで、「既存のことにこだわらず新しいことをしましょう」と言ってくれたことが一番大きかったと思います。現在もこの新しい運用でしっかりと業務を回してもらっています。もし現場の部門長の同意がなければ、途中でブレが生じてしまい、現場が使いにくくなるくらいならアドオン開発をしようだとか別システムを入れようという話になっていたかもしれません。
WAP:
今回のプロジェクトは財務会計だけでなく管理会計の領域まで同一システム内で実現された点が大きな特徴かと思います。管理会計まで一元化して進められた背景について、お聞かせください。
MIRARTHホールディングス 安田様:
背景として大きかったのは、事業における価格コントロールの難しさです。不動産業界では、マンションの建設原価が年々上がっています。当然、当初の計画から、原価も最終的な売価も変わっていきます。企業として利益を確保しなければいけない局面、あるいは値引きの判断をする際、土地を仕入れた時の収支を参照せず、個人の感覚や過去の慣習で判断をしているケースが少なからず見られました。特に地方の物件になるほど、この価格コントロールが難しくなる点に経営側としても大きな課題を感じていました。
アドオンゼロ、カスタマイズゼロでAI活用を後押し
WAP:
リアルタイムな収支データで価格コントロールを行うという、まさに経営とITが直結した取り組みですね。先ほど「AI活用にはクリーンなデータが不可欠」とお話しいただきましたが、この点についても詳しくお聞かせいただけますか?
MIRARTHホールディングス 安田様:
皆様もご存知の通り、AIは数字の計算が得意なようでいて、不得意な部分もあります。特にExcelなどに並べられた数字の羅列を見た時に、これらの数字が何を意味しているのかという文脈の読み解きがまだ苦手です。このような状態で、ミスの許されない会計という領域の計算を任せるのは、やはりまだ怖い部分があります。とはいえ、AIがそこをしっかり読み解けるようになるための技術進化は続いていますので、会計システム側も「AIが正しく読めるデータベース」にしておくべきだと考えています。いわゆるメタデータの領域となるのかもしれませんが、データマップのような形で、双方をうまく組み合わせて、AIがローデータから数字の意味を理解していけるようになればいいなと思っています。
WAP:
「HUE」が、アドオンゼロ・カスタマイズゼロのクリーンなデータ基盤を実現することで、AIがデータを取り込みやすくなり、そのポテンシャルを最大限に引き出せるということですね。
MIRARTHホールディングス様のさらなる変革を、今後も引き続きご支援させていただきます。本日は貴重なお話をありがとうございました。
※本記事は2026年6月17日時点の内容です
* Gartner®, Press Release, 2026年4月6日, “Gartner、ERPの標準化はデジタル技術を活用した業務変革に不可欠な経営課題であり、カスタマイズを20%未満に抑えるべきとの見解を発表” https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20260406-erp-survey
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