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2026/06/25

【2026年度開始】セキュリティ対策評価制度によってシステム調達の実務対応はどう変わるか

2026年度末から本格始動する「セキュリティ対策評価制度(SCS)」は、これからのシステム調達実務にどのような影響を与えるのでしょうか。本記事では、発注側企業の目線から、知っておくべき制度の概要やスケジュール、従来のセキュリティチェックシートとの違い、そして実務への具体的な影響を解説します。

目次

    1.セキュリティ対策評価制度(SCS)の概要と「既存制度」との違い 

    1-1.セキュリティ対策評価制度(SCS)とは

    セキュリティ対策評価制度(SCS:Supply Chain Security assessment model、以下「SCS評価制度」)とは、経済産業省が主導する、企業間取引におけるサイバーセキュリティ対策を客観的に評価・格付けする日本初の公的な第三者認証制度です。2026年度末から本格始動される予定です。

    本制度の対象は、国内のサプライチェーンを構成するITベンダーや開発・製造委託先など、あらゆる企業です。これまで評価取得が難しかった中小・中堅企業も対象となります。評価にあたっては、統一的な公的基準に基づき、認定された審査機関が客観的に評価し、「星の数(★3〜★5)」で格付けされる仕組みです。

    これにより、従来は不透明だった「取引先のリアルなセキュリティレベル」が外部から一目でわかるようになります。

    1-2.これまでのセキュリティチェックと何が違うのか?

    これまで多くの発注企業は、自社のリスクマネジメント上の免責を得るため、100項目以上にも及ぶ独自仕様の「セキュリティチェックシート(Excel)」を開発・製造委託先やITベンダーに配り、回答を義務付けてきました。しかし、受注側の中小企業にとっては、発注元ごとに微妙に設問が異なる膨大な問診票への対応が過重な業務負担となり、結果として「実態は伴っていない回答」が発生するリスクを構造的に生み出していました。また発注側にとっても、複数の取引先から回収した数百・数千枚のExcelを精査・評価する専門知識やリソースの確保が難しく、結局は「提出させた」という形式上の資料になっていることが課題でした。

    SCS評価制度は、こうした「形式上のセキュリティ」を打破するために導入される公的な第三者認証制度です。国が定めた統一的なセキュリティ基準に基づき、専門の審査機関が企業のセキュリティ対策状況を客観的に評価し、「星の数」で可視化します。これにより、サプライチェーン全体のセキュリティレベルは一目瞭然となり、B2B取引における「客観的かつ可視化された共通のものさし」が誕生します。

    この制度の導入により、発注側は面倒なExcelの配布・集計業務から解放され、星の数を確認するだけで取引先のセキュリティリスクを瞬時に把握できるようになります。

    1-3.「ISMS」と「SCS評価制度」の決定的な違い

    発注側企業が委託先のセキュリティを担保する客観的な指標として、これまで頼りにされてきたのが「ISMS認証」の有無でした。しかし、ISMS認証と新設されるSCS評価制度との間には、その「目的」と「実務上のアプローチ」において大きな違いがあります。

    比較項目 ISMS認証 SCS評価制度(新設)
    目的 自らリスクを管理し、継続的に改善する体制(PDCA)の構築 サプライチェーン全体のセキュリティ対策状況の可視化・底上げ
    評価の対象 セキュリティを管理する「体制やプロセス」 実装されている「具体的な技術的対策」
    主な対象企業 全業種(比較的大手・中堅企業) サプライチェーンを構成する全企業(中小含む)
    実務上の特徴 運用・維持のコストが高く、中小サプライヤーの網羅的な取得は困難。具体的な技術対策までは見えにくい。 NIST CSF等をベースに、実装すべき対策が明確に定義されており、「星の数」で実効性を瞬時に判断できる。

    既存のISMS認証は、組織がセキュリティを維持するための「体制やプロセス」が国際規格に準拠しているかを認証するものです。強力な枠組みである一方、運用・維持にはコストと人的リソースを要するため、リソースに限りのある中堅・中小のサプライヤーが網羅的に取得・維持することは現実的ではありませんでした。また、発注側から見ても「ISMS認証を持っているが、今回委託する個別のシステム運用において、実際にどのような具体的対策(暗号化やアクセス制御など)が機能しているか」までは見えにくいという課題がありました。

    SCS評価制度は、NIST CSF(米国国立標準技術研究所のサイバーセキュリティフレームワーク)などをベースに、企業が「最低限(★3)」「標準的(★4)」に実装すべき具体的な対策項目が明確に定義されており、専門家や評価機関の客観的な評価を経て星の数で可視化されます。

    SCS評価制度は、最初から「サプライチェーンにおける取引関係」を前提に設計されているため、受注企業と発注企業の「共通のものさし」として、2社間取引の契約に「どのレベル(星)を求めるか」を明確にするための共通言語となります。

    2.制度導入で発注側企業に求められる「実務対応」

    一見すると発注側にとってはメリットばかりのように思えますが、発注企業にとっても相応の準備が必要です。

    2-1.調達するシステムの位置づけ(重要度)に応じた「★」の基準策定

    すべてのシステム調達に対して、一律に「★4以上」を求めると、対応できるベンダーが絞られすぎ、調達コストが高騰したり、委託先が見つからなくなったりするリスクがあります。そのため、発注側企業は自社が調達するシステムの内容や位置づけによって、求める★の数を切り分ける「基準づくり」が必要になります。

    • 【★4~★5が必要なケース】
      顧客の個人情報を大量に扱うシステム、インフラ直結のシステムなど、停止や漏洩が経営の致命傷になるもの。

    • 【★3以下で許容できるケース】
      社内の限定的な部署で使う情報共有ツール、機密情報を扱わないWebサイトの制作など。

    2-2.独自チェックシートから「公的基準(SCS)」へのシフトと社内ルールの変更

    これまでは総務部やIT部門が個別に行ってきた「ベンダー向けセキュリティチェックシート」を、段階的にSCS評価制度の確認へと置き換えていく必要があります。これによってチェックに要する工数は大幅に削減されますが、一方で社内の調達規程や稟議プロセスにおける「セキュリティ確認ルール」の変更が必要になります。

    2-3.【デジタル・ガバナンスの確立】強靭性を企業の差別化資産に変える

    SCS評価制度から得られるデータを、自社のデジタル・ガバナンスの核として組み込むことも有効です。サプライヤー各社のSCS評価スコアを、購買管理システムやERPなどの自社システムと連携させ、サプライチェーンリスクを可視化します。これにより、どのサプライヤーにリスクが集中しているか、代替調達先の確保が必要な領域はどこかを、経営陣や調達責任者がデータに基づいて判断できるようになります。

    さらに、このようにして構築された「強靭で安全なサプライチェーン」そのものを、自社の顧客に対する強力なマーケティングメッセージ、すなわち「当社の製品・サービスは、サプライチェーンの末端に至るまでセキュリティが担保されている」という自社ならではの差別化要素としても機能させることができます。

    3.2026年度末の運用開始から逆算するロードマップ

    2026年度末のSCS評価制度の本格始動に向け、発注側企業に残された時間は決して多くありません。サプライヤー側の評価取得や、自社の調達基準・システムの刷新には一定のリードタイムを要します。そのためには、今から計画的な準備が必要です。

    【SCS評価制度 運用開始から逆算するロードマップ例(2026年現在〜2027年3月)】

    【SCS評価制度 運用開始から逆算するロードマップ例(2026年現在〜2027年3月)】

    まとめ

    「セキュリティ対策評価制度(SCS)」は、発注側企業にとって、システム調達時のセキュリティ確認工数を劇的に減らしつつ、サプライチェーンガバナンスを強固にする強力な武器になります。

    一方で、客観的な評価指標であるSCS評価制度が存在する時代において、「委託先のセキュリティ実態が分からなかった」という言い訳は通用しなくなります。どれほど製品やサービスの単価が安くとも、SCS評価が低くサイバーインシデントを起こす確率が高いベンダーを選ぶことは、経営全体に対して巨大な「将来債務」を抱え込むことを意味します。万が一、委託先経由でデータ漏洩やシステム停止が発生すれば、その事故対応、事後補償、そして信頼回復に要するコストは、発注時に削ったわずかな調達コストの数十倍、数百倍となって発注側に跳ね返ってくるからです。

    この新制度を見据えた整理を今から進めておくことが、将来的な調達リスクを排除することに繋がります。まずは自社が発注している主要なシステムを洗い出し、どのレベルのセキュリティ水準(★の数)を求めるべきかの社内ディスカッションから始めてみてはいかがでしょうか。


    日本の大手企業向け購買・調達管理システム「HUE Purchase」 
    大手企業向けの購買・調達管理システム「HUE Purchase」は、日本の複雑な法令や社内ガバナンス、サプライヤー評価に標準対応。現場が意識せずとも、データに基づいた適正な取引と「攻めの調達」を実現します。