インタビュー参加者 左から
中山 龍太郎 様(グループ財務本部 グループ財務部プロジェクト推進室)
小長谷 温子 様(グループ財務本部 グループ財務部プロジェクト推進室)
北村 ちづる 様(グループ財務本部 グループ財務部プロジェクト推進室 室長)
森 博也 様(グループ財務本部 本部長)
多種多様なカルチャーのグループ企業が集う
―まず、新システム「HUE Classic」を導入された背景をお聞かせください。
森様:
新たな経理・財務基幹システム導入の背景について説明する前に、パーソルの社風についてお話したいと思います。当社は、テンプスタッフという人材派遣会社が母体となっており、2013年4月に就職支援や求人情報提供などを手掛けるインテリジェンス(現パーソルキャリア)や国内大手企業の派遣子会社をM&Aするなど、様々な人材サービス企業を買収してきました。当社グループはこうした積極的なM&Aで着実に業容を拡大してきましたが、当然、各グループ会社はカルチャーも異なりますし、業務の進め方もまったく異なるわけです。例えば、社内会議を招集する際も、まずメールの送り方や使用するツールが違っていて、そして議事録のフォーマットも異なってました。ホールディングスの考え方をグループ各社に浸透させることは難しく、そうした中、グループ横断で物事を進めることは大変困難を極めました。
2016年4月の「HUE Classic」の初期導入時も例外ではありませんでした。こうしたグループの抱える課題には十分な時間をかけて、コミュニケーションを密に取り、お互いに理解を深めあっていくことで解決できると思いますが、今回の会計システムのリプレースには大きな課題が待ち受けてました。
トップダウンで「HUE Classic」導入プロジェクトを推進
―新システム導入の大きな課題とは、どんなことだったのでしょうか?
森様:
実は、既存の会計システムの保守切れが目前に迫っていたのです。「HUE Classic」導入を決定したのは2014年10月です。一方で、既存システムの保守が2016年7月に終了することになっており、我々に与えられた導入期間はわずか1年半でした。しかし、このタイミングで新システム導入を完了させなければ、最悪、保守切れのシステムを使うことになり兼ねないため、新システム導入プロジェクトはトップダウンで半ば強引に前代未聞の短納期を前提として進められることとなりました。
―新システムへの移行期間が短い中、何が「HUE Classic」導入の決め手となったのでしょうか?
森様:
導入理由として、大きく二点が挙げられます。一つは、従来型の会計システムにない独自の思想に基づいてシステム構築していくという新しい手法に大きな期待を寄せました。そして、環境の変化に対応するために常にチャレンジ・進化し続けるワークスのカルチャーと、当社のカルチャーが似ていたことが二点目です。両社がベンチャーマインドという共通点を持っていたわけです。 もちろん、他社のシステムも複数ベンチマークしましたが、CIOの小澤 稔弘のもと、トップダウンで導入プロジェクトを立ち上げました。
前代未聞の超短納期プロジェクトが始動
―導入プロジェクトの概要についてお聞かせください。
森様:
2014年10月の「HUE Classic」導入決定と同時にプロジェクトチームを立ち上げました。旗振り役は小澤で、会計領域のプロジェクトマネジャーは私が務めました。メンバー一同は「HUE Classic」の可能性にかけたわけです。一般的なホールディングカンパニーは本社と子会社にそれぞれ経理部があると思いますが、当社では連結決算などの経理業務の効率化を図るため、経理機能をホールディングスに集約しています。経理は新規導入プロジェクト立ち上げ以前からシェアードサービスという体制で運用しておりました。
「HUE Classic」の導入は本当に大変だったのですが、その後もM&Aや新会社設立で新規に「HUE Classic」導入を続けており、業務改善をおこなっていくためにも、財務の中に専門組織である「プロジェクト推進室」を2017年10月に新設しました。
―システム移行完了まで1年半とは、導入期間としてはかなり短いですね。
森様:
我々としては、まず人事システムを入れ替えて、そのあとに新会計システムを導入するという段階的なスケジュールでリプレースしたかったのですが、既存の人事システムの保守も同じタイミングで切れることから、会計と人事の両システムを同時に新規導入することを決断しました。1年半で二つの異なる社内システムを導入するのはスケジュール的にも至難の技でした。
―新システム導入直後は、どのような状況でしたか?
北村様:
2016年4月の導入ではグループ会社30社を対象に一気にシステム稼働を果たしました。導入当初は「ログインできない」という問い合わせが圧倒的に多かったですね。それから「使い方が分からない」、「承認者が登録されていないので、ワークフローが通らない」といった様々な問い合わせが引っ切りなしに寄せられてきました。毎日数百件のエラーが発生し、電話は鳴りっぱなしで、まるでコールセンターのようでした。
とくに経費精算申請・処理が増える4月後半から5月に入ってからは問い合わせ件数がさらに増え、日中の9時〜18時の業務時間はすべて問い合わせ対応に充てていました。本来の月次決算業務は18時以降から行うという多忙な日々を過ごしていました。この問題の背景として、多くのグループ会社において、システムにおけるマスターデータが整備・定義されていなかったことが挙げられます。その結果、ワークフローに関する問い合わせも非常に多かったです。また、システム導入以前は、承認や決済が紙ベースで、会計システム導入自体が初めてというグループ会社も少なくありませんでした。ワークフローとはなにか、PDFへの変換方法が分からない、といった基本的な問い合わせも数多くありました。
とても大変な日々でしたが、ワークスさんから多大なるサポートをいただきながら、社員もシステムを触ることで慣れてきて、3カ月目からはエラーも、問い合わせも、日に日に減っていきました。このシステム導入を機に、マスターデータの整備・管理をしっかり行い、業務効率が向上したことも大きなベネフィットだと思っています。
システム導入により20%のコスト削減を実現
―システム導入後の効果についてお聞かせください。
森様:
このシステム導入により、20パーセントのコスト削減を実現しました。これまで現場では膨大な量の紙を使用していました。例えば、承認権限を持つ管理職が出張で各地を回りますと、その承認者を追いかけるように、全国各地にファクスを流し、承認印をもらった後、また、ファクスで送り返してもらう、といった具合です。場合によっては承認に1カ月を要することもありました。
今回のホールディングカンパニー全体にグループ横断的なシステムを導入することによって、そのような目に見える無駄を大幅に減らすことできました。経理業務の処理もスピーディーになり、会社数が増加し、全体のボリュームが増えている中でも、一定の人員で行うことが出来るようになりました。
パッケージ化で新規導入期間は2カ月と劇的に短縮
―今後のシステム導入計画についてお聞かせください。
小長谷様:
2019年1月から2019年4月までのわずか3か月で新たに9社へ「HUE Classic」を導入しました。2020年4月には新たに4社導入する予定です。それが完了すれば、計37社で運用されることになり、国内の関連会社はほぼすべてが網羅されたことになります。今後の新規導入については、M&Aで新たにグループ入りした会社や、また当社では分社化も盛んにおこなわれており、分社化された会社にも順次導入していく予定です。
2016年の時点では、システムを導入するのに1年半を要したわけですが、導入に必要な要件を精査し、標準化・パッケージ化することで、短期間での導入・稼働が可能となりました。今では、早いと2カ月程度もあれば、どのグループ会社にもシステムを納入し、立ち上げることができます。
中山様:
私はシステム導入時に、経理の実務メンバーとともに、実務とシステムとの間のフィット&ギャップを詰めるシステム周りの業務を担当しています。システム導入する際の基となっているのが小長谷のつくったパッケージで、それを基に現場とすり合わせていけば導入完了となるわけです。
「HUE Classic」は、そもそもシステムが標準化されており、カスタマイズがほぼ不要なことが特徴です。クライアントの業務の実態に合わせて、どんなシステムでも構築できるのが強みと見ています。あらゆる業務に対応可能なメニューが豊富にあります。その数多くのメニューの中からどんなことが実現できるのか、何が必要なのかを試行錯誤しながら、パーソルにあったメニューを選別・整頓し、パーソル向けにパッケージ化してくれたのが小長谷です。その成果として、システム導入の大幅な期間短縮が可能となりました。
基幹システムとの連携が次のステップ
―これからの目標をお聞かせください。
森様:
現状では事業会社ごとに異なる基幹システムを使用しており、そこに蓄積されるデータ、例えば、売上データは随時マニュアル作業で会計システムに取り込んでいますので、基幹システムと会計システムを連携し、データを取り込む作業を自動化するシステムを構築していくのが次のゴールと考えております。
これからのホールディングスの人材は手を動かすよりも頭を動かして、新しい価値を生み出す仕事を手掛けていかなければなりません。「処理する経理」から「考える経理」へとシフトしていく−−。それを実現していくためには、「HUE Classic」は当社にとって必要不可欠なツールだと考えています。
最新鋭のシステムであっても、導入してから5年後、10年後には必ずリプレースすることになります。システムは常に変化し、進化していくものです。新しいシステムを導入することで、我々も新しい仕事のやり方を模索しなければなりません。その進化を当社のプロジェクト推進室のメンバーがけん引してくれることと期待しています。
―本日はありがとうございました。
※本記事は2020年4月の内容です。