【講演レポート】日本発AI、 人工脳SOINNとは何か
日本発AI、 人工脳SOINNとは何か
2017年11月22日(水)に開催した「COMPANY Forum 2017」での東京工業大学 工学院システム制御系 准教授 兼 SOINN株式会社 代表取締役CEO 長谷川修氏の講演内容をダイジェストでお届けします。
工学院システム制御系准教授 兼
SOINN株式会社 代表取締役CEO
長谷川修氏
「近い将来、自分専用のAIを自分のスマホで育てる時代が来る。」――日本発AI“SOINN”の生みの親、長谷川氏はそう語る。
SOINNは、東工大の研究室で長谷川氏が独自に開発した“人工脳”=学習型汎用人工知能である。プログラムするのではなく、人間の脳と同様に、データを入力すると細胞分裂して自ら「成長」し、機能や性能が向上する。投入できるデータに制限がないため、テキストや画像、売上等の数値、天気や地図、各種センサー情報といったあらゆるデータが学習対象となる。
SOINNは、広義ではディープラーニング同様にニューラルネットワークの一種であるが、長谷川氏は「ディープラーニングは、特定の分野で高い性能を発揮するが研究レベルのものが多く、ビジネス転用においては様々な課題がある。学習データにおいては、企業が保有している学習のもととなる業務データ量が不足していることに加え、ノイズの除去や大量のラベリングが必要になったりと即座の情報流用が困難だ」と指摘する。
一方でSOINNは、ドローンであれば数十といった少量の教師データから運用可能で、ノイズの自動除去も実現している。学習データはスペックの異なるロボット間で知識転移を行うことができるため、例えば100機に別々の経験を積ませ同期させるというクラウドAIに対応する。様々な機器や装置に組み込めるため、インターネット接続ができる環境下では、SOINNが定期的にクローリングを行い自己成長するという。
展開の容易さから、小売店の売上分析や製造業における目視検査、ドローンの飛行技術、五感を必要とする福祉介護ロボットと業種業界問わず幅広く活用されている。
ごみ処理プラントにおける火力調整といった職人の勘に頼る言語化困難な技術においても、各種センサー数値と職人の行動を学習しノウハウの継承ができるようになった。これまで職人の“暗黙知”といった言語化できない情報は学習が困難であったが、職人の動きをセンサー等を通じて収集することで新人を教育するように「現場に即した学習」ができるのだ。
SOINNはスマートフォンの中にダウンロードすることも可能だ。スマートフォンは個人情報・プライベートデータの宝庫である。GPSやスケジューラー、脈拍等の生体情報、IoTと連動することで、日々の運動データや食事、健康診断情報から行動のアドバイス・サポートをしてくれる自分専用のAIを育成できる。AIを遠い世界のものではなく、身近なものとして認知できれば様々な恩恵が受け られるようになる。
長谷川氏は、その水先案内人として「SOINNが架け橋になれれば」と期待込め、講演を終えた。
ワークスが主催する「COMPANY Forum」は、その年のトレンドに合わせた有識者や企業の方々に登壇していただくビジネスフォーラム。国を挙げて“働き方改革”が叫ばれた2017年は、Workforce Innovationをテーマにし、人工知能(AI)をはじめとする最先端技術・ビッグデータの活用等、多彩なセッションを開催しました。