「花王」×「国税庁」×「ワークスアプリケーションズ」 それぞれの立場から「これからの経理の働き方」を語るトークセッション
プロジェクト「日本の経理をもっと自由に」は、コロナ禍の中でも請求書捺印や発送で
出社していた経理の人々を、紙の業務から開放したいという目的で、ROBOT PAYMENTと賛同企業で
発足されたプロジェクトです。経理の新しい働き方を共創するこのプロジェクトの中で開催されたイベント、
”日本の経理をもっと自由にCONFERENCE2020”に先駆けた
「これからの経理の働き方」を語るトークセッションが行われました。
業界のリーディングカンパニー、花王の財務部門であり、またDXを推進する立場でもある上野様、
国税庁の中で、電子帳簿担当として法改正に関わってこられた小倉様、また、サービサーとして
大手企業に会計システムを提供し、自身の会社でも電子化を推し進めたワークスアプリケーションズの秦COO、
それぞれ異なる立場である3者が、電子帳簿保存法改正についての見解や、経理部の展望について語りました。
登壇者紹介
【モデレーター】
株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員フィナンシャルクラウド事業部長
藤田 豪人さん
国税庁 課税総括課課長補佐
小倉 啓太郎さん
花王ビジネスアソシエ株式会社 会計サービスグループ部長兼花王株式会社会計財務部門経理企画部
上野 篤さん
株式会社ワークスアプリケーションズ 代表取締役 最高執行責任者
秦 修(当社COO)
電子帳簿保存法改正に対する見解について
左:藤田さん 右:小倉さん
藤田さん:
ではパネルディスカッションに入らせていただきます。
1つ目のテーマである「電子帳簿保存法改正に対する見解」というところですが、
電子帳簿法改正って立場によっていろんな見え方があると思います。
立場によって見え方が変わってくると思うので、
忌憚ないご意見をいただければいけないと思っています。
私は法律単体の変更だけではなく、進めなければと思っているのですが、
まずは秦さん、ワークスアプリケーションズというサービスサーとして、様々な企業と取引されている中で
見解等々を聞いていると思います。
そのあたりどうお考えなのかお伺いしたいのですがよろしいでしょうか?
秦:
我々のユーザーは大手の企業様がメインになりますが、
コロナ禍となった4月・7月、2度に渡り、大企業の財務・経理部門を対象に
調査を行いました。
今回の電子帳簿保存法改正に対する見解については、端的に言うと、電子化の促進・推進について
非常に追い風になっている、ということを確認できたかなと思います。
裏づけですが、今回調査をした中でコロナ禍で、システムベンダーに対して
「どういった機能・対策を期待していますか」という質問をしたところ、
75%のユーザー様が電子帳簿や電子帳票といったところの閲覧や
保存ができる電子帳簿保存機能を望んでいる・期待しているというお答えを頂きました。
【システム・ベンダーに期待する機能・対策】
※【2020年7月実施】3つの視点で考えるコロナ禍決算業務対策調査結果レポート(ワークスアプリケーションズ調べ)
それに次いで多かったのが67%の回答者が、PDF等の電子帳票を添付して回すようなワークフロー、
そういった機能を期待しているような話でしたので、そういった意味で、電子帳票改正の
期待・ニーズが高いのかなというところを確認できました。
藤田さん:
ありがとうございます。実際、75%と67%はかなり高いですね!
ワークスさんだとユーザー様は大手企業様になりますよね。
秦:
300~400社くらいほどがユーザー数で、その大部分が大手企業や上場企業のお客様です。
ニーズとして、ペーパレス化によるテレワークもありますが、大手企業のお客様に関しては24%が
もうすでに原則テレワークにしている、60%は一部テレワークにしてます、という調査結果も出ています。
大手企業に関しては、テレワークの環境はすでにある程度整っているかなと。
※【2020年7月実施】3つの視点で考えるコロナ禍決算業務対策調査結果レポート(ワークスアプリケーションズ調べ)
どちらかというと本質的なところ、経済効果的な電子化をすることによって
紙の煩わしい取り扱いがなくなるので、そういった流れで、
より効率的な業務の構築ができるというメリットに期待されているのかと思います。
残念ながら現状、業務改善の見直しがしっかり進んでいるかというと
まだまだその辺についてはこれからなのかなというところですね。
我々、ベンダーとしてはしっかりと製品・機能・サービスを提案しながら
啓蒙活動をしているような最中です。
昨日も電子帳簿法対応の製品・サービスをリリースしていまして・・・勝手に宣伝入れてますけど(笑)
藤田さん:
逆に上野さん、花王様という大手事業会社の中核でいろいろ改革を進めていらっしゃると思うんですけど、
上野さんから見た電帳法改正ってどのような見解をお持ちですか?
上野さん:
実は、今回の電帳法改正は「待ちに待っていた」という部分がありますね。
特に、領収書に関しては、会社のクレジットカードで決済すれば領収書はいらないということなんですね。
これは非常に大きいと。私たちにしてみれば、待ちに待っていた改正です。
一気に領収書だすために会社に来る社員を救えるのはありがたいと思っています。
一方で、今回のテーマの請求書に関しましては、インボイス、制度の奨励、複数税率、消費税、源泉とか、
個人事業主の問題とかですね、いろいろ課題がありますので
その辺に関してはさらなる規制緩和・電子化の支えになる法改正を期待してるというとこですね。
左:上野さん 右:秦
藤田さん:
いきなり、法改正期待ということがきましたが、もう小倉さん気づいちゃいましたね(笑)
国税庁さんとしての公式のコメントはきちんとできないと思いますが
小倉さんの気持ち・コメントとしてご見解をお伺いできればと思います。
小倉さん:
本日このような場にお招きいただきありがとうございます。私、国税庁でございますけれども、
この電子帳簿保存法をご活用いただきまして、適正に書類・帳簿を保存いただく、
それからひいては税務申告を適切におこなっていただけるのは本当にありがたいなと思っています。
今回の改正につきましても、お二方からご評価をいただきまして、
こちらについても運用の面からしっかり当庁としても検討しておりますので
ありがたいと思っています。
簡単にご説明させていただきますと、改正はクラウドを利用したものになりますが、
電子取引で受け取った書類、これをクラウド保存するケースにおいて
税法上の保存義務が認められるという制度になりました。
クラウドならなんでもいいというわけではなく、ユーザーは自由に改変できないものであるとか
タイムスタンプが事前にふしてあるとか、一定の措置は必要なのですが、コロナのご時世ですとか
経済社会のデジタル化はますます進むと理解しておりますので、
皆様にはぜひご活用いただいて、電子取引を推進いただけたらと考えております。
経理の業務の改善の実績
藤田さん:
今回は実行フェーズに移すというところなので、次のテーマに入らせていただきます。
実際の「経理の業務改善の実績」ですね。
僕らはプロジェクトという見方をすると、機運は高まってきているのを感じています。
ただ、様々なベンダーさんと話していると「ここからだよね」と。
問い合わせ等々増えてきているけど、ここから変わっていくんじゃないかと
ご意見いただいている感じがしているのですが・・・
上野さんからお伺いしてもよろしいでしょうか。
ニュースでも取り上げられていたと思いますがどんな実績をお持ちでしょうか?
花王であればコロナ前からやられていたと思うので、コロナになったことでこの実績がどう変わってきたのか
というところも踏まえてご意見いただければと思います。
上野さん:
今日は請求書の電子化というプロジェクトの発表ですがそれこそ、その手前の受発注業務とか、
意外とビジネスってつながっているんですよね。
なので、請求書決済を自動化しようとしますとその手前の見積もりですとか、発注ですとか、
そういったところもやらないといけないので、我々そこも取り組んでます。
今のところ、受発注に関しては大手の小売業様とはほぼほぼ電子化、90%強ですね
ただ業務用品とかまだまだFAXが残っており、こういったものは半分くらいを
電子化に向けて進めています。
今回の請求書に関しましては、コロナ前に始めました。
コロナ禍に入ってから、加速するように機運が高まっています。
ここは2割、3割の進捗ですね。やっぱり5割以上を電子化していきたいとそう考えています。
藤田さん:
2割、3割の電子化ということで弊害になっているのは何ですか?
上野さん:
やはり、「花王さんだけのためにかえられない」っていうのが1つありますね。
他の取引先様含めて紙で発送するようになっていると。
ですので、花王さんのみ抜いて、インターネットでデータ化するのは大変だ、とか。
後は、コストの問題。今日語られていないのが人材の問題。ITに詳しい、明るい人材がいないなど、
現場の高齢化や、ITに関するセキュリティー上の懸念ですとか
そういった環境周りもあるかもしれないですね。
藤田さん:
なるほど。ありがとうございます。では、秦さん、
サービサーとしてではなく、ワークスアプリケーションズという会社として、
聞いてみたいのですが、業務改善というテーマで少しずれてしまうかもしれないですが
ワークスさんは会社を分けたりいろんなことがあったと思います。
そのあたりで業務改善しましょうとか、電子化しましょうとか、
ERPベンダーさんだからこそのことがあったと思いますが
工夫されたことや電子化で、こんなこと大変だったよということはございますか?
秦さん:
今触れていただいた会社分割は、去年行われたのですが
そういう大きな変化がある時は、得てして大きなチャンスなのかなと思っています。
会社分割前は財務・経理は55名ほどいて、実際に会社分割どうしましょうかというところで、
最終的に、53対2という非常に斬新な分け方になりました(笑)
53対2で分けて1年たって、まわっていますかというと
非常に綺麗に業務効率化も進み、問題なく進んでいます。
じゃあ、どうやったのかというところ、現時点では十数名いるんですが、
一旦スクラッチの状況から、0から立ち上げなおすということでした。じゃあ肝は何だったかというと、
そこは完全に覚悟の問題です。そこは経営のコミット。ここはしっかり変えていくんだという覚悟で進めていきました。
今回コロナ禍で、当社も他社さん同様、なかなかテレワークが進まない状態だったのですが、
原則出社は禁止でした。じゃあなぜ会社に来ないといけないのか、というところで、
請求書・ワークフロー・稟議の電子化を全て一気に行いました。
4月以降、基本経理も財務も、バックオフィス全般、会社的に、
ほとんど会社に来なくても業務が回るような状態になっているというところです。
いろいろ言い訳付ければ、できないっていうことはでてくるかもしれないけど、
経営として、現場としてコミットして覚悟をもってやればできるのかなと。
幸いにもクラウドのサービスなど、いろいろソリューションはありますし、
コロナ禍の状況は他社さん・取引先も含めて、同じ課題を持っていると思いますので
協力体制を非常に構築しやすい状況なのかと思います。
それこそ、自助、共助、公助じゃないですけど、自分たちでできること、
協力してできること、あとは行政の方でもサポート頂けるということなので、
「電子化の絆」をうまく作っていければいいんじゃないかなと思います。
藤田さん:
今日一番いいなと思ったのが腹くくる、やるしかないという状況に「追い込む」と決めてやりきる。
そういう環境的になったらやりこむと、上から意思決めてやりきるぞという
思いでやるのが電子化の近道なのかとすごく感じましたね。ありがとうございます。
国税庁の場合、実績という話ではないのかもしれないですけど
小倉さんから見ると電子化っていうところの電子帳簿の改正って、
こんなところ改善してほしいんだ、とか、具体的なこういう思いで
この法律があるんだよ、ということがあれば教えてください。
小倉さん:
国税庁としましてはこの制度をもとに運用するということですけれど、
今までは電子的として受け取った書類をクラウドに保存するだけでは、
税法上の保存義務を満たさないとなっていたわけです。でも、今後は一定の措置の施された
クラウドに保存すれば税法上の保存義務を満たすということになりました。
この効果を国税庁としてどう考えるかというところですが
まさにおっしゃったとおり、営業担当にキャッシュレス決済を推進するとか、
今までは紙保存されていたところ、また電子取引を行ってクラウド保存をされていても、
紙ベースで保存をされていれば、その紙ベースに紐づいた形で稟議や経費申請の決済ですとか
そういったものが挙げられていたと思いますのでそういうものが電子で完結すると考えています。
部内・部外関わらず、電子的なやり取りだけで回るんではないかと考え
リモートワークの推進にもつながるのではないかと考えております。
若干毛色はちがうのですが、電子的に作成された帳簿があれば帳簿とデータを紐づけて
適正・適切に帳簿処理ができるのではないかなと考えております。
経理業務における今後の展望
藤田さん:
皆さん立場が違うと思いますので、思っていることをおっしゃっていただければと思います。
秦:
経理業務における今後の展望ですが、基本的に大きな流れとしては、大きな電子化・システム化で
どんどんマニュアル作業はなくなっていくと思います。
新たなルーティン作業は発生するのかもしれませんが、今の紙のやり取りのルーティン作業はなくなって
新たな高付加価値の業務に移行していくのではかなと。
その過程で、システムベンダーとしてやれること、標準化、業務の簡素化を提案したり、
システム化・電子化の推進ができるのではないかと思います。
もともと私はCFOの経験がバックグラウンドですので、
高付加価値の業務という観点で、経理・財務の現場に何を求めるかというと、
会計データから非会計データへ、どんどんドリルダウンしていくということ。
過去に起こったことを説明するのではなく、フォワードルッキングで、今なにが起きているのか、
今後何が起こるのかなど、シナリオ分析して経営に提言できるような組織になっていくことですね。
その前提で一番重要なのが、あらゆる会社の事象が電子化されて、それが経営に上がっていくということです。
非会計データと会計データのスムーズなデータ連携により、ドリルダウンもタイムリーにできていきますし、
より付加価値の高い情報提言が、財務部門・経理部門からできるのだと思います。
経営のビジネスパートナー的な役割に移行していくのかなというところが私の考えているところですかね。
上野さん:
長期的に考えますと就労人口も高齢化してまいりますし、働き手も不足してくると。
日本の国家的な問題ですけど、それに打ち勝つためには電子化が必要ですね。
とかく経理はAIとか、電子化によって仕事が奪われるといったような風潮がありますが、
決してそうではなくて、国難といわれる状況に立ち向かっていくためには
やはり規制緩和と同時に、デジタル化を推進して、残った工数で創造的な、
競争上の優勢のある業務にシフトしていくと。これがなくては企業成長はないと考えております。
小倉さん:
国税庁としては、電子保存制度を活用いただくのはありがたいと思っております。
先ほどいただいたご意見を踏まえながら、引き続き前向きに検討ができないかと考えております。
1点だけ。
帳簿処理の適正、正確性は担保していきたい、ご理解していただきたい
と思っていますので、その点についてはご協力をお願いします。
藤田さん:
では、まとめさせていただきます。
私、今お伺いしていて、またこのプロジェクト通じて感じているのが、電子帳簿法改正は2020年10月、
インボイス制度は2023年の10月、DXレポートに書かれている2025年の崖、というところで
DXに関わるところは急激に変わってくる5年だと思っています。
このプロジェクトもそうなんですが、電子化の点ではなくて、人口減も含めて大きな国家課題に
向かっていくスタートラインに立っていると思っていますので、
この機運をもとに、どんどん電子化が進んでいけばと思っております。
それでは皆様、ありがとうございました。
https://www.robotpayment.co.jp/keiri_liberty/
◆日本の経理をもっと自由にCONFERENCE2020特設サイト
https://www.robotpayment.co.jp/keiri_liberty/conference1022/
【2020年7月実施】3つの視点で考えるコロナ禍決算業務対策調査結果レポートなど
お役立ち情報はこちらから
資料ダウンロード一覧